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開発者の洞察:スマートなデッキ構築ヘルパー

開発者の洞察:スマートなデッキ構築ヘルパー

皆さん、こんにちは!私はティエン、「ハースストーン」チームのシニア・データサイエンティストです。今回は、新しい「スマートなデッキ構築ヘルパー」機能についてお話しします。先日この機能が実装されて以来、コミュニティから出てきている疑問の数々にお答えできれば、と思います。

まずはこの機能を紹介し、それからより深い話――つまり皆さんが知りたがっているであろう「科学」についてお話ししましょう!

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「スマートなデッキ構築ヘルパー」とは?

新しいデッキを作るのは、熟練プレイヤーにとっては楽しくやりがいのあることです。ですが、しばらく「ハースストーン」を休止していたプレイヤーや新規プレイヤーだったり、時間が限られていたり、あるいは自分のカードコレクションからランク戦に通用するデッキを作るのに少々助けがいる、という場合もあるでしょう。そこで「スマートなデッキ構築ヘルパー」の出番です。この機能の目的は、煩雑な部分を自動的に処理し、ほんの数クリックで手軽に、人気が高く強いデッキを組めるようにすることです!

スマートなデッキ構築ヘルパーを使うには、まず好きなクラスでスタンダードデッキを組み始め、好きなカードを何枚でも(0でも可)入れましょう。そして「デッキ自動完成」または「完了」をクリックすると、あなたがデッキに入れたカードをベースに、あなたのコレクションにあるカードだけを使って、自動的かつ知的に残りのカードを選び、デッキを完成させます。どのようにデッキを完成させるか、例を挙げましょう。あなたが「ウーンダスタ」と「死にまね」の2枚をデッキに入れ、自動完成を選んだ場合、スマートなデッキ構築ヘルパーはいくつかのファクターを考慮し、最も適切であると判断したデッキを構築します――例えば、人気の「キャスリーナ断末魔ハンター」デッキを。

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本当にこれくらいシンプルなのです。空っぽのデッキからでも、あなたが使いたいカード数枚を選んだ状態からでも、素晴らしいデッキを完成させますよ。

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その仕組み

この舞台裏ではどんな風にエンジニアリングが作動しているか、説明しましょう。スマートなデッキ構築ヘルパーシステムは2つのレイヤーを持ち、それぞれのレイヤーはあなたのデッキを自動完成させるための、複数のサブレイヤーを持っています。では、これらのレイヤーがそれぞれデッキを作るために何をするのか見てみましょう…。

デッキ作成の第一レイヤー:メタの作成

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混乱を避けるため、まずはここで言う「メタ」の意味をさらっと説明します。メタは「メタゲーム」の短縮系で、現在のランク戦モードのラダーに見られるデッキのトレンドを指します。強いデッキを作ろうとする場合、多くのプレイヤーは現在のメタを考慮し、対戦相手として多く遭遇することが予想されるデッキに対して勝つためのカードをデッキに採用しようと試みます。例を挙げましょう。武器が多めのメタ(つまり、多くの人気デッキに武器カードが含まれている、ということです)では、デッキには武器を破壊する「酸性沼ウーズ」または「暴蝕ウーズ」を採用することで、メタに対し効果的に「カウンター」を決めます。

デッキ作成の第一レイヤー(通称メタレイヤー)では、現在のメタでどんなデッキが人気か、あなたが既にデッキに入れたカード、そしてあなたのコレクションにあるカードという条件下で最良のデッキを組もうと試みます。メタを定義するにあたっては、計算アルゴリズムを用いて、人気のデッキのうち同じ基本系のものをサブグループとして分類します。現在のメタでプレイされているデッキの種類――例えば「秘策ハンター」、「ドラゴンプリースト」、「奇数パラディン」などがこうしたサブグループにあたります。これらのサブグループの下に含まれる各デッキの中身は少しずつ異なりますが、究極的には同じタイプのデッキです。機械学習の用語では、このプロセスを「クラスタリング」と呼びます。我々のクラスタリングアルゴリズムは、何百万ものデッキのバリエーションから成るデータを、各デッキを1つのデータポイントとして数え、各データポイントは何百次元内の1つのベクトルを示すものとして解析します。このクラスタリング情報と、その他の数学的ソリューションと組み合わせて利用し、アルゴリズムはあなたのデッキが30枚になるか、第二の「バックフィル」レイヤーが発動するまで、動的に埋めていきます。

プレイヤーの腕前が違えば、デッキやプレイパターン、チャレンジもどうしても違ってくるため、メタもあなたのランクに応じて千差万別となるでしょう。これを扱うため、このようなメタデッキを埋めていくプロセスのための異なるサブレイヤーがあります。あなたがランク20前後のプレイヤーなら、レジェンドランクのプレイヤーとは違うメタデッキになるはずです。加えて、我々のメタレポートのパイプラインは頻繁に更新されるため、あなたのメタデッキは常に最新のものとなります。

あなたがデッキに入れたカードと、あなたのコレクションのカードを使用して効果的なメタデッキを作る試みをした後、作成の第二レイヤーに移行します…。

デッキ作成の第二レイヤー:バックフィル

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メタレイヤーがあなたのコレクションから30枚のカードを決定できなかった場合、第二レイヤー(通称「バックフィル」レイヤー)がデッキ作成を引き継ぎます。このレイヤーはデッキを完成させ、可能な範囲で最高のカードを使用することを保証します。まず、あなたのコレクションを使って効果的なメタデッキを作ることはできないとゲームが判断した場合、あなたが使えるカードを使って最高のデッキを作ろうとする試みを中止します。代わりにバックフィルアルゴリズムは、良いカードと適切なマナカーブを持った、バランスのよいデッキを作ろうと試みます。では、あなたのデッキに「良い」カードであるかをどう判定するのでしょうか?

ユニークなシナジーやコンボのポテンシャルは考慮せず、各カードは各クラスのデッキで使用された場合について、それぞれ個別の「カードパワー」というレーティングを持ちます。この数値は一定ではなく、デッキの現在の構成に基づき、動的に変化します。しかしながら、カードパワーの決定は通常3つのファクターにより変動します:

  • 対戦へのインパクト:あるカードが、デッキの勝率にどの程度貢献しているか。
    • 例えば、「ウォーター・エレメンタル」は「悪辣なる海賊」よりもメイジの勝率により大きく貢献しています。
  • マナコストのバケット:同じマナコストのカードの集合。
    • 1マナまたは2マナのスポット1つを埋めるカードを1枚探すことが目的である場合は、「アージェントの従騎士」は良いチョイスかもしれませんが、5マナのバケットではほぼ間違いなく良いチョイスとはなりません。
  • 特定のマナバケットを埋めすぎるのを避ける:
    • 特定のマナコストのバケットに既にカードが10枚ある場合、他の選択肢よりも明らかに「良い」カードではない限り、同じコストのカードを追加することは避けるようになっています。

バックフィルのプロセス中は、最高のカードパワーを持つカードを動的に選択してデッキに加えます。数学的にお話しすると、勝率への貢献度から変換された項プラス複数のペナルティ項から成る関数が「カードパワー」です。各検索の目的は、全ての実行可能なソリューションの中から、目的の関数を最大化する1枚のカードを見つけ出すことです。

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その他のこと:ルールと制限

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高度な数学と機械学習メソッドの他にも、我々はこれら2つのデッキ作成レイヤーに、あなたのデッキがシンプルに意味を成すものになるよう、数多くの品質保証ルールを実装しています。例えば、あなたが未完成のデッキに既に「ケレセス公爵」を入れている場合、できるだけコスト2のカードは採用しないようになっています。

デッキに一切カードを入れていない状態で、短時間内に「自動完成」を繰り返した場合、システムは毎回違ったデッキを構築しようと試みます。ただしこの機能は、デッキが空の状態から自動完成を試みない限りは有効になりません。

制限として、現在「スマートなデッキ構築ヘルパー」はスタンダードデッキの作成時のみ有効ですが、ワイルドへの対応も探求中です。加えて、あなたのコレクションにないカードを含むデッキを作成しようとした時にポップアップする、代替カードを提案する機能は、現在スマートなデッキ構築ヘルパーを使用していません。

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「スマートなデッキ構築ヘルパー」でクールなデッキを作れたら、ぜひ以下のコメント欄からシェアしてください。また質問がありましたら、同じくコメント欄からお聞かせください。それではまた、酒場で会いましょう!

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