オーバーウォッチ 2

メイキング・オブ・マウガ:逞しい身体、豪快な性格が特徴の新タンクヒーローの開発裏をTeam 4がご紹介

メイキング・オブ・マウガ:逞しい身体、豪快な性格が特徴の新タンクヒーローの開発裏をTeam 4がご紹介

皆さん、こんにちは。「オーバーウォッチ」チームのヒーロー・プロデューサー、ケニー・ハドソンです。新ヒーローの製作は「オーバーウォッチ」の開発の中でも特に難しく、やりがいのある仕事です。ゲーム内に実装される各コンテンツには、高い基準が設けられていますが、新ヒーローのマウガも例外ではありません。今回の記事では、短編小説内の登場人物だったマウガがいかにして新ヒーローとして実装されるに至ったかを、大まかにご紹介していきます。

新ヒーローのアイデアの源はさまざまです。コンセプト・アートから着想することもあれば、開発データの中に埋もれているアビリティのテストデータからアイデアが生まれることも。そして時に、「オーバーウォッチ」のストーリーに対するファンの声がヒントになることもあります。マウガの場合は、この3つ目です。短編小説「捨てられた過去」が書かれた当時、チームの中でもマウガをゲーム内のキャラクターとして送り出そうという気運が高まっていました。

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プロトタイピング

新ヒーローの開発工程は、大きく3つに分かれます。最初の工程「プロトタイピング」では、ヒーローのアビリティや全体的なデザインを考案し、仮のアニメーション、サウンド、エフェクトを使って、これらのアイデアを合体、検証していきます。

このプロトタイピングで、チーム内でも高評価のアビリティが生まれたのですが、そのアビリティはいわゆるサイキック系で、マウガの個性にまったく合わない類のものでした。このため、せっかく形になった新アイデアを捨ててマウガのアビリティを考え直すのか、それとも新アイデアを生かしてまったく新しいヒーローを作るのか、という特殊な選択にチームは迫られることになりました。

この時は結局、サイキック系のアビリティから新たなヒーロー、シグマを作り出す方針を採りました。しかし、その後もさまざまなリリースとプロジェクトを進めつつ、マウガのあの攻撃的な性格に合ったアビリティが形になるまで検討を重ねました。こうしてマウガのアビリティが固まっていったところで、チームを待っているのが、次の工程「プリプロダクション」です。

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プリプロダクション

プリプロダクションは、ヒーローを構成する各パーツの「組み立て作業」ともいえる工程です。特定の分野に精通したデベロッパーを集めて“ストライク・チーム”を結成し、ヒーローに命を与えていきます。1人称・3人称視点のアニメーションを担当するアニメーター2名、キャラクターと武器の3Dモデラー2名、VFXアーティスト1名、サウンド・デザイナー1名、コンセプト・アートのアーティスト1名、ヒーロー・デザイナー1名が互いに力を合わせて、長い時間をかけながら、この工程を進めていきます。

マウガのプリプロダクションにおいては、「今後の課題を洗い出す」、「アート面の基本的な要素を固める」という2つの目標が設定されました。課題はアート面から出てくることもあれば、エンジンの技術的な制限やその仕組み、ヒーローの出身地の文化的要素から生じることもあります。

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たとえば、プリプロダクションの段階で出たマウガの課題の1つに、彼のタトゥーがありました。コンセプト・アート担当のアーティストが、ポリネシア文化をモチーフに美しいタトゥーを考案したのですが、サモアの文化を知るコンサルタントに見てもらったところ、そのタトゥーが現地の文化に即していないことがわかりました。そこで、サモアの伝統的なタトゥーに精通するSi'I Liafau氏に協力を依頼して、ストライク・チームのモデリング担当、コンセプト・アート担当、Si'I Liafau氏が共同で、サモアの文化に忠実なタトゥーを作り上げることで、この課題を乗り越えました。ほかにも、マウガの武器「チャチャ」と「ガニー」のサイズという課題もありました。

「オーバーウォッチ」の中でも最大級のサイズを誇るマウガの武器は、1人称視点にした時の画面の占有率が大きかったため、ゲームプレイに支障をきたさないよう武器のサイズに配慮する必要がありました。VFX面でも、この2つの武器のVFXを差別化しつつ共通性を持たせたり、マウガのモデルのサイズやスケールとの調和を図ったり、といった調整が必要でした。課題がはっきりとし、ビジュアル要素と課題解決案が固まると、最長となる最後の工程「プロダクション」が待っています。

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プロダクション

プロダクションは、マウガの開発プロセスの中で最も長い期間を要した工程です。この段階で、マウガの各要素が徐々に確定していきます。プレイテストとフィードバックのセッションを経て、マウガのバランスが煮詰められていくのもこの段階です。バランス調整と並行して、モデラーは新たなタトゥーのデザインをテクスチャにコンバートして最終版の結合データに反映し、VFXアーティストはプレイ画面の見やすさに配慮しつつ、マウガの全体的なデザイン、プレイスタイル、キャラクターを特徴づけるビジュアル・エフェクトを作り上げていきます。

プロダクションを支障なく進められるよう、この工程に入ってからは、大規模な変更を最小限に抑えるようにします。そうしないと「この要素もいいな」と、チームが際限なく新要素を追加していき、いつまで経ってもマウガを配信できなくなってしまうからです。ただし今回は、プロダクションに入っても納得いかない点がアルティメットのゲームプレイ面にありました。

マウガのアルティメットは一時期、バリアとチェーンを張って敵を一定時間閉じ込めるだけの代物でした。「ケージ・ファイト」でマウガを圧倒的に有利にする追加要素とは何か?とデザイナーと検討を重ねて生まれたのが、あのアルティメット中の弾薬無限ボーナスです。シンプルとはいえ重大な追加要素なので、マウガが強くなりすぎないよう、チーム内で慎重に検討しましたが、これこそクリティカル・ダメージで追加ライフを一時的に獲得できるパッシブや、それに重ねてライフ・スティール効果のある「カーディアック・オーバードライブ」を使用できるマウガにふさわしいアルティメットであるという結論に至ることができました。

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リリース

新ヒーローの開発はとても困難な挑戦です。しかし、経験豊富で才能豊かなアーティスト、デザイナー、エンジニアとともにヒーローを作り上げていくその作業は、困難であると同時にとてもやりがいがあります。

プレイヤーの皆さんに喜びを届けることが、私たちの最重要目標です。マウガをリリースするまでの道のりは長いものでしたが、この目標を達成できたことをチーム一同、何より嬉しく思っています。小説の登場人物だったマウガに対する、皆さんのあの熱意がなければ、彼がヒーローとしてデビューすることはなかったでしょう。

チームが手塩にかけて作り上げたマウガを、皆さんにも気に入ってもらえたら幸いです。チームで進めているその他のプロジェクトを発表できる日を、心より楽しみにしています。

- ヒーロー・プロデューサー、ケニー・ハドソン

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