ウォークラフト ランブル

ウォークラフトランブルの舞台裏:「ミニ」をつくる

ウォークラフトランブルの舞台裏:「ミニ」をつくる

今回の「ミニ」の開発に関する舞台裏では、アートディレクターのジェレミー・コリンズが「ウォークラフト ランブル」の空飛ぶ要塞とも言える「ガーゴイル」を題材に、とびっきり陽気な兵士たちに命を吹き込む過程をご紹介します。

開発の各段階

各開発段階の「ガーゴイル」。左から順にコンセプト、ブロックアウト、スカルプト、ファイナル・テクスチャ、インゲーム
クリックして拡大表示。

ガーゴイルなどの「ミニ」のモデルを作成する際には、最終的にキャラクターがゲームに追加される前に、複数の開発段階を経ることになります。

コンセプト

コンセプトは初期のアイデアを描いたものであり、クリーチャーのモデリングを担当するキャラクターアーティストにインスピレーションを与え、そして参考資料を供するものです。基本的には、コンセプトアーティストは複数の角度から見たキャラクターの絵を制作します。これはターンアラウンドと呼ばれ、キャラクターモデラーがそれに見て後方や斜めの角度から見た姿を把握します。キャラクターの見た目に関する情報が多ければ、モデリングの際に大いに役立ちます。

ブロックアウト

「ミニ」のブロックアウトとは、サイズ感や部分部分の質感の違い、キャラクターの全体的なプロポーションを把握するために、大まかな角張ったブロック状の形を配置したモデルのことを言います。ブロックアウトの段階で作成されたカクカクした形のモデルが、あとで追加されるサーフェス(表面)のディテールの基礎となります。

スカルプト

最初の2つの段階が完了すると、次はモデルをZbrushと呼ばれるデジタル・スカルプティング・プログラムに落とし込み、スカルプト(彫刻)を行います。デジタルの粘土でモデルを作るようなものです。ここで、まぶたや筋肉組織、毛などのサーフェス(表面)のディテールが追加されます。最終的なスカルプトが合格となったら、当のモデルは、テクスチャリングのプロセスに移行します。

ファイナル・テクスチャ

3Dモデルの表面にデジタルで彩色し、ガーゴイルに最終的なスキン(テクスチャ)が追加されます。キャラクターアーティストはさまざまなテクスチャ・マップを使い、色や反射、透明度などのプロパティを調整して、「ミニ」のモデル表面に質感を与えます。

「ガーゴイル」ミニをゲーム内に登場させて命を吹き込む

「ミニ」の初期モデリングが完了して準備が整ったら、リグを追加(リギング)してアニメーションで「ミニ」を動かし、いよいよゲーム内にデビューさせます。

ところで、リギングとはなんなのでしょうか?リギングとはキャラクターモデルにデジタルの「骨」を追加する作業のことです。このデジタルの骨を使って、アニメーターがガーゴイルのキャラクターモデルを動かし、さまざまなポーズや表情を取らせます。
「ガーゴイル」ミニの5種類のポーズ。オブジェクト上でかがむ、筋肉を誇示、宙に浮く、地面に低く伏せる、背中を前に向けて筋肉を誇示
クリックして拡大表示。
アニメーション・ポーズ

ほとんどの場合、「ランブル」のアニメーターは、キャラクターの印象をつかむために、さまざまなポーズを作成して試してみます。新たなポーズを作成する際には、力強いシルエットや、分かりやすくてダイナミックなポーズを心がけています。このときのポーズが、ゲーム内の能力やタレントのアニメーションの基礎となることもあります。試しに作成したポーズがインスピレーションの源となってタレントが生まれたこともありました。「マーロックのタイドハンター」のタレント「安全バブル」は、アニメーターのひとりであるケアリン・フールニンクが作ったポーズが元になっています!

ゲームデベロッパーやアーティストである私たちは、自分たちが作成するアートワークを常にさまざまな視点から眺めてみますが、特に気にかけているのは、ゲーム内のゲームプレイ時の視点で見たアートの見え方です。「ウォークラフト ランブル」は見下ろし視点ですので、キャラクターのアニメーション作成において独特な課題がありました。ゲームプレイ中、キャラクターに関する情報の大半を、そのキャラクターの体の上部3分の1で示す必要があったのです。ほとんどのキャラクターは、肩から上の部分しか見えないからです。そのため、キャラクターアートを作成する際には、使用するカラーパレットを意識的に限定する必要がありました。「ミニ」の色を基本的に一色か二色とすることで、たとえばガーゴイルをフィールドに配置した際には、黒、紫、灰色の配色でそれと判断できるようになります。

また、「ミニ」同士の違いを素早く把握してもらうためには、色や形、シルエットも重要になります。当初、ガーゴイルはハーピーの攻撃アニメーションと同じように、脚で攻撃していました。しかし、ガーゴイルは空飛ぶタンクですので、もっと筋骨隆々で威圧的にする必要がありましたし、大量のダメージに耐えられそうな見た目が求められました。そのため翼を大きくすることになったのですが、この大きな翼が、脚を使った攻撃に問題を起こすことになりました。

円を描いて飛ぶアニメーションを作成しているとき、ケアリンはガーゴイルの肩/鎖骨、上腕の筋肉の動きに目をつけ、翼をはためかせる際の力強さを強調することで、筋肉質であるという演出を加えました。ガーゴイルのタレント「翼の強打」(移動速度が33%上昇)では、「タンクらしさ」を残すために、翼をはためかせる速度は上げませんでした。ガーゴイルが翼を素早くパタパタさせてしまうと、迫力がなくなると感じたからです。

こうした要素が組み合わさって、生命力あふれる威圧的でマジカルな「ミニ」が生み出され、戦場で敵を蹴散らす準備が整うわけです。

ガーゴイルのクレジット
コンセプト:サム・ディディエ
キャラクターモデル:ジョー・ケラー
アニメーション:ケアリン・フールニンク

次の記事を見る

注目のニュース