オーバーウォッチ 2

ワークショップのアップデートで、かつてない自由度をクリエイターの手に

ワークショップのアップデートで、かつてない自由度をクリエイターの手に

「“鍋つかみ”はもう外してしまおう」と切り出したのは、ゲームプレイエンジニアのダン・リード。

同じくゲームプレイエンジニアのザック・メトカルフは応じます。「えっ?つまり、補助輪を外す、みたいなイメージ?」

「ようは、火傷することもあるだろうけど、もっと効率よくやれるようにするってことだよ」とリードは答えます。

2人が話しているのは、プレイヤーが独自のゲーム・モードを作成できるゲーム内スクリプトシステム、「オーバーウォッチ」のワークショップの新パッチについてです。今回のパッチ(PTRで公開中)では、新たなマップやツールの追加や改善だけに留まらず、クラッシュにつながるエラーを抑止する目的で設けられていた煩わしい制限も取り払われます。「制限をなくし、よりパワフルに」というのが今回のワークショップのパッチのポイントです。その結果、一段とクールな作品が生まれることをリードとメトカルフは期待しています。

リードもメトカルフもワークショップへの想いは人一倍ですが、それぞれがこれまでに歩んできた道のりは異なります。リードはBlizzardが誇るベテランエンジニアで、「オーバーウォッチ」チームが発足した当初から開発チームに籍を置いています。ワークショップについても、2017年の開発初期から携わってきました。かつてはピアニストを志していましたが、空き時間の大半をゲーム制作に注ぎ込んでいることに気づき、大学時代に作曲の勉強からプログラミングに転向したという経歴の持ち主です。

メトカルフの経歴は、また少し違います。若い頃は本格的にテニスに打ち込み、名門アカデミーに所属してイギリス中のトーナメントに参加していました。Blizzardへの入社は2018年で、それから間もなく、ローンチ前のワークショップの開発チームに加わりました。

「テニスは瞬発力、体力、戦略のバランスが完璧にとれたスポーツです。ラリーでボールを返すことに集中していると、催眠状態のような境地に入ることがあるんですが、エンジニアの仕事に活かせているものがあるとしたら、そうした深い集中力や意志の強さじゃないかと思います」(メトカルフ)

リードと同じく、メトカルフもまた複雑な技術を極めることに快感を覚えるタイプですが、フィードバックに目を通すうちに、プレイヤーの中にも自分たちと似たような喜びをワークショップに見出している人がいることにメトカルフは気づきました。とは言っても、何もかもが始めからうまくいったわけではありません。ツールに習熟したクリエイターが増えれば、寄せられるフィードバックも増えていきます。2人はそうした声に真摯に耳を傾けました。今回のパッチで加えられた変更は、どれもプレイヤーのフィードバックが基となっています。

「プレイヤーの立場になって考えてみると、確かにストレスとなる部分がありました。それなら改善するまでです」(リード)

最たる例が、カスタム・ゲーム・マップです。マップにふさわしい環境を見つけるのに、プレイヤーがどれだけの手間と時間をかけているのかを知り、2人とも驚きを覚えました。

「人気のゲーム・モードはマップ本来の範囲を飛び出してプレイするものも多いんです。たとえば『HAVANA』の屋根がそうですね。ちょうどいい感じの平面で、競技形式のゲーム・モードにぴったりなんですよ」(メトカルフ)

クリエイターがより自由に創作できるように、2人は「オーバーウォッチ」のマップ担当チームと協力し、「WORKSHOP CHAMBER」「WORKSHOP ISLAND」「WOEKSHOP EXPANSE」というカスタム・ゲーム専用の新マップを3つ用意しました。「WORKSHOP CHAMBER」は40x40メートルの閉鎖空間です。「WORKSHOP ISLAND」は同じサイズですが、こちらは屋根や壁がありません。「WOEKSHOP EXPANSE」は900x900メートルの広大な平面で、「オーバーウォッチ」チームがこれまでに手がけたマップの中でも最大面積を誇ります。

クリエイターから不満が集まっていたもう1つの点は、サブルーチンの欠如です。今回の新パッチでは、リードとメトカルフの手によって、この便利なプログラミング機能が新たにワークショップに追加されました。サブルーチンは、平たくいうと、スクリプトの他の部分とは別に独立して実行できる関数を指します。この機能がなかったために、クリエイターはリスクの高い代案を採用するしかなく、結果としてスクリプトのサイズや複雑性が増すことも往々にしてありました。

「これまではスクリプトを何度も複製するか、複雑なやり方で特定のルールを特定のタイミングで実行させるか、その二者択一でした」(メトカルフ)

1つの方法として、変数が「FALSE」から「TRUE」に切り替わるたびに実行するルールを作るという手がありました。ですがこの場合、ルールが実行されたあとに同じ変数を「FALSE」に戻さなければなりません。

「できなくはないですが…一言で言って拷問ですね…」(リード)

「サブルーチンができたおかげで今後はより簡単に、ロジックの特定の部分を切り離し、必要な時にだけ呼び出せるようになりました」(メトカルフ)

考えただけでもストレスが溜まりそうですが、ワークショップで実際に作成するとなれば猶更です。今回のパッチのアップデートは、こうしたプレイヤーの不満がアイデアの源となっています。スクリプトサイズの上限が近いことを教えてくれる「スクリプト診断パネル」もまさにその産物のひとつです。この機能のおかげでスクリプトの可否も予測しやすくなります。こうしたツールによってクリエイターの皆さんがこれまで以上に効率よくスクリプトを書けるようになることを願って、チーム一同開発にあたりました。

「ワークショップの実装当初より、プレイヤーの皆さんの創造力には驚かされ続けてきました。便利なツールの導入や改善を施すことで、これまで以上にどんな作品が生まれるのか、楽しみで仕方がありません」(メトカルフ)

まさにこうしたワークショップのクリエイターの皆さんへの信頼こそが、今回のパッチのもう1つ目玉となる、ループ前には必ず「待機」アクションがなければならないという必須条件の撤廃へとつながりました。この仕様はループの無限発生でゲームがクラッシュしてしまう事態を抑止していましたが、それと同時にスクリプトの流れを阻害し、技術をもったクリエイターの枷となっていました。

「多大な自由には大きな責任が伴います。ですが皆さんなら必ず使いこなせるはずです。これまでのような安全装置が必要だと考えていた時期もありますが、今は違います」(リード)

今回の変更はほんの始まりにすぎません。今回のパッチでさらなる自由を得た皆さんが、ワークショップをさらに探求してくれることでしょう。そこから得られたフィードバックに目を通し、今後も新たな機能を追加していきたいと考えています。プレイヤーの皆さんが一段と便利になったツールを使いこなし、“鍋つかみ”を外して、改良された、あるいはまったく新しいゲーム・モードを作り上げるのをチーム一同楽しみにしています。

ワークショップのアップデートの詳細はパッチノートの全文をご覧ください。新しくなったワークショップはPTRで公開中なので、ぜひその使い心地を確かめてみてください。

はじめたばかりで勝手がわからないという方は、まずはこちらのページを参照し、「オーバーウォッチ」のワークショップで新たなゲーム・モードを作成する方法を学びましょう!

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