年の瀬の冬期休暇が近づいてくると、ハースストーン開発チームは「Free Your Mind」に備えるのが恒例です。Free Your Mindは一年の勤務期間の最後の一週間に非公式、自主参加で行われる開発セッション、ハッカソン（ハック＋マラソン）のイベントであり、Team 5のメンバーがグループや個人で自分の好きな題材を選び、開発を行うことができます。ただし、ひとつだけ条件があり、何らかの形で「ハースストーン」に関連があるものにしなければなりません。

現在、「ハースストーン」に存在する機能やシステムのいくつかは、Free Your Mindのプロジェクトから誕生しており、ランダムなカード裏面デザインやデッキコードのコピペ機能、デッキの並べ替え、オフラインのコレクションブック、バトルグラウンドのパーティ、闘技場のドラフトで所有しているゴールデンカードがゴールデンとして登場する機能、コレクション内で魔素に還元できる余分なカードの検索などなど、いずれもハッカソンのプロジェクトから誕生しています。ライブゲームシステムや内部ツールの改善に繋がったFree Your Mindプロジェクトも存在します。

また、ライブサーバーには導入されなかったFree Your Mindプロジェクトも数多くあります。エキセントリックな酒場の喧嘩として、リズムゲームや恋愛シミュレーションなどというものもありました。「StarCraft」をテーマにしたStarCraftカードセットが作られたこともあります。また、いずれ準備が整えばライブゲームに導入したいと温めているプロジェクトも存在します。

今年もFree Your Mindの季節がやってきましたので、ここで昨年のイベントで登場した注目のプロジェクトをいくつかご紹介します。

ハースストーンAFK大会

昨年はリード・デザイナーのパット・ネイグルがFree Your Mindでグループを結成し、機械学習を活用したシミュレーションと人工知能にまつわる新たな技術を披露しました。このグループのプロジェクトは、毎ラウンド、コンピューター同士が部外のゲームチームの作ったデッキを戦わせて、「ハースストーン」の大会をシミュレーションするというものでした。

全部で32種類のデッキリストが提出されてランダムに対戦が組まれ、シングルエリミネーションのトーナメントで戦いました。3戦2本先取で対戦のシミュレーションが行われ、トーナメントを通じて、機械学習AIは全部で8,253回の判断を行いました。準決勝は5戦3本先取、決勝は7戦4本先取で戦われました。そして5-2で優勝したのは、「ダークムーン・フェアへの招待状」でセット・リードを担当したジョン・マッキンタイアーが提出したハイランダーハンターデッキでした。

この離席中（Away From Keyboard）を意味する「AFK大会」は11月初旬にリリースされた酒場の喧嘩、「おとぎの喧嘩」のインスピレーションとなり、それは一年で最も多くプレイされた喧嘩となりました。この酒場の喧嘩では、プレイヤーが首なし騎士となって役者たちに指示を出し、初公開の演劇を上演することになります。毎ターン、プレイヤーはAIの判断に影響を与えるバフを選択し、AIが手札をプレイするのを見守ります。これは機械学習AIを導入したものであり、開発チームは将来の利用に向けてさらに精度を高める予定です。

楽しい新たなカード裏面デザイン

Free Your Mindに参加するのはデザイナーやエンジニアだけではありません。昨年は品質保証チームのデイビッド・カーロックが愛犬の「ニンバス」を取り上げたカード裏面デザインを作りました。当時は開発チームの全員が在宅勤務で、ニンバス君はお馴染みの存在でした。瞬く間にキャンパス中のみんなと友達になり、その人懐っこい性格と笑顔で知られるようになった彼はハースストーン アップペットの記事にも品質保証部門の代表として登場していました。チームの多くの仲間にとって、ニンバス君はハースストーンの非公式マスコットになっていました。

当時、デイビッドはカード裏面デザインの品質保証部門のオラクルでした。オラクルとは、特定の機能のすべてを把握することを仕事とする役職であり、その機能について他のチームメンバーから質問があったときに回答し、他にもその機能のテストデザインやドキュメントを書き上げたりします。そのため、デイビッドはカード裏面デザインの津々浦々を把握していました。デイビッドがモックアップと準備を整え、アーティストのジュヨン・オーが完成させるのを手伝いました。

完成したものがこちらです：ニンバスがペット用ベッドでハースストーンボールで遊んでいます。ニンバスのカード裏面デザインがゲーム内のコレクションに追加されることはありませんが、本作の非公式マスコットとしてみんなを元気づけるという、彼のチーム内での重要な役割に敬意を表して、ここにご紹介しました。

今年のFree Your Mindではどんなプロジェクトが飛び出すのか、今から楽しみです。開発チームに取り上げてもらいたい面白いアイデアがあったらぜひ教えてください！