ディアブロ IV

美麗さの裏側で:「ディアブロ IV」のグラフィック

美麗さの裏側で:「ディアブロ IV」のグラフィック

「ディアブロ IV」は6月5日16:00(太平洋夏時間)正式リリースを迎え、勇気ある放浪者たちが新たな地獄を冒険できるようになります。放浪者たちはサンクチュアリに蔓延る悪魔を倒していく中で、すぐに「ディアブロ IV」の特徴に気が付くでしょう――地獄には引き込まれるような闇が待っています。暗さというこの審美的観点は、この世界のルーツであるオリジナルの「Diablo」と「Diablo II」で高く評価されたゴシック調を意識しています。これら最初の2作のリリースは約27年前にさかのぼるもので、そこから現在に至るまでの間に、ビデオゲームにおいて視覚言語を表現するための技術は劇的な変化を遂げました。

今回はリード・ソフトウェアエンジニアのケヴェン・カンティン、プリンシパル・ソフトウェアエンジニアのジョン・バックリーケビン・トディスコ、リード・テクニカルアーティストのアーロン・アイクマン、そしてシニア・ソフトウェアエンジニアのサミュエル・デルモンが、開発チームがいかにして「ディアブロ IV」のグラフィックに命を吹き込んでいるのか、開発に使われている技術の一端、そして拡張性に対する私たちのアプローチを詳しくご紹介いたします。


目次

理念と指針となる原則

テクノロジーを通じた闇への帰還

サンクチュアリの拡張性

ローンチ時点での家庭用ゲーム機でのパフォーマンス

今後について


理念と指針となる原則

– 解説:ケヴェン・カンティン、リード・グラフィックエンジニア

「ディアブロ IV」のグラフィックチームのゴールと理念は、Blizzardの成功の原動力と同じ価値観に根ざしています。私たちはゲームプレイを最優先に考える企業であり、その決断は常に、楽しく遊べるゲームを制作することに根ざしていなくてはなりません。定命の民が住む世界であるサンクチュアリを描いた「ディアブロ」シリーズは、それぞれに特色があると共に、シリーズを追う毎にレンダリング技術の限界を超えてきました。「ディアブロ IV」は暗いトーンの作品であるため、私たちは「グラフィックチームとして、そのコンセプトをサポートするために具体的に何ができるのだろうか?」と自問しました。そして出した答えが、幅広い選択肢の中から完成度の保証された、少数の信頼性の高い機能を選定するという結論でした。

私たちの理念の中心にあるのは、協調です。私たちのチームはグラフィックエンジニアとテクニカルアーティストで構成されていますが、「ディアブロ IV」にはほかにもさまざまなアートチームが存在し、デザイン・開発工程において私たちはそういったチームと協調することになりました。専門分野が異なるチーム同士がひとつの特定の機能に取り組むことは、私たちにとって珍しいことではありません。私たちはアートチームだけでなく、本作に取り組んでいる全員の視点を深く尊重しています。

私たち全員にとって重要なもうひとつの視点が、本作が幅広いファンに受け入れられ、できる限り多くのプレイヤーに心から楽しんでもらうというものです。プレイヤーの皆さんは所持しているデバイスもさまざまで、性能差もあることは理解していますが、私たちはそれでも、皆さん全員にスムーズかつ魅力的なビジュアル体験をお届けしたいと考えています。本作のグラフィック開発におけるパイプラインは、ローエンドのハードウェアでも効率的に動作するように最適化されています。また一方でハイエンドのハードウェアについては、その高い性能を活かしてビジュアルのリアリティを強化し、ゲームを新たなレベルで体験できるよう図っています。

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テクノロジーを通じた闇への帰還

– 解説:ジョン・バックリー、プリンシパル・グラフィックエンジニア

物理ベースレンダリング

「ディアブロ」の陰鬱なビジュアルは、ゲーム上のマテリアルの見た目のリアリティを向上させることができる物理ベースレンダリング(Physically Based Rendering、PBR)によって支えられています。名前からわかるように、これは現実世界とそこでの物理的な値を用いることで、架空のゲーム世界における光と物体の相互作用をモデル化する技術です。ビデオゲームでは制作者の仮想した「現実」をコードで表現することが可能で、それが時に非常に楽しいことは事実です。しかし、グラフィックを完全に現実から離れたものにしてしまうと、それはそれで、とてもわかりにくいものになり得ます。そこで私たちは現実世界の物理法則に基づいた技術を使い、本作に適していると思われる状況でのみ現実から逸脱することにしました。例えば、現実世界には「ネガティブ光源」などというものは存在しませんが、本作では、場合によっては闇の魔法によって世界から光を消し去りたいという状況もあります。

物理ベースでマテリアルをレンダリングできるようにするため、アートチームは大量のデータを新たに用意し、光がマテリアルの表面に対してどう作用するのかをグラフィックエンジンに読み込ませました。そこからアートチームは、例えば所定のゲーム内マテリアルからどの波長の光が発せられるか、微細なディティールの滑らかさや荒さ、表面はどれぐらい金属的なのかなど、数多くの要素を決めました。

この画像はリリスのマテリアルの物理的性質を個別に表しています。

光、影、そして空間

アートの方向性について初期段階でディレクションがあり、私たちは「ディアブロ IV」のアートはより暗いトーンで表現する必要があることをはっきりと認識しました。つまり、フレームレートを高い状態で維持しながら、ハードウェアに可能な限り影の表現を重視しなければならない必要性がありました。変化し続けるオープンワールドやランダムに生成されるダンジョン、ダイナミックに変わる天候、そして皆さんの唯一無二のキャラクターが登場するムービーのことを考えると、端的に可能な最適化や対処法は限られていました。幸運にも、現在のグラフィックカードや家庭用ゲーム機は数十年前には想像もつかなかった驚くほど高い性能を持っており、毎秒数兆回もの数学的演算を行えます。そういった数兆回の演算性能があれば、複雑な光と影の計算を行い、現実の入り組んだディティールを忠実に模倣することができます。

この画像の張り巡らされた線は、「ディアブロ IV」のダンジョンでのライティングを可視化したものです。

別々の光源から生まれる影(シャドウ)を演算しなければならず、これが事態を複雑化していました。この計算をスピードアップするため、私たちは遅延レンダラーと呼ばれる、複雑なマテリアルの計算をさまざまな光源間で共有する定石のグラフィック技術を用いました。

遅延レンダラーを基礎として、その上に影の計算や保存、そしてオーバーレイを行うための複雑なシステムを私たちは一から組み上げました。ダンジョンはランダムに生成されるため、ダンジョンの構造がどういうものであるか事前にはっきりと知ることはできません。幸い、ダンジョンには生成後に変化しない部分が存在します。こうした影はライティングシステムによって管理され、その計算はスケジューリングされて行われるため、計算を一度に行わないで済むようになっています。シャドウシステムは床や壁などの静的オブジェクトを利用するように作られており、大抵の場合、計算結果は後で使うために保存され、保存した計算結果に重ねてプレイヤーキャラクターなどの動的オブジェクトにオーバーレイ表示します。

マテリアルの品質はゲームアートの根幹を成しますが、そのアートに命を吹き込むためには光と影が必要です。マテリアルと同じく、「ディアブロ IV」におけるライティングも現実世界の物理法則に基づいています。こういった技術要件は、芸術的ビジョンを表現しようとするアートチームにとっては往々にして負担になります。そこで私たちはチームに専門分野に集中してもらうため、そういった要件を優秀なアートツールの下に配することで管理を容易にしました。この「ディアブロ IV」のために作成された強力な新規アートツール群は、ルーメンや放射照度、カンデラなど多くの物理的項目を管理できます。

開発中の予想していなかったことのひとつとして、間にある空間の重要性が挙げられます。迫真の世界に暗いトーンを持たせるため、私たちは光とオブジェクトの間にある埃や粒子をモデル化する必要がありました。これはボリューム・レンダリングと呼ばれるもので、「ディアブロ IV」のアートに命を吹き込む上で重要な要素のひとつとなっています。

かつてはこうしたエフェクトにはパーティクルシステムが用いられ、長方形のオブジェクト上に画像を配置して、それをカメラの前に重ねることで粒子などを模倣していました。結果として埃や煙に見えるものを映し出せますが、これは原始的な方法です。現実世界では光はあちこちに反射し、壁などの硬くて高密度な物体と相互作用を起こしますが、空気中の埃や粒子といった大きな影響を受けるエリアを通ることもあり、その際に物理的特性が変化します。「ディアブロ IV」では空気をモデル化し、空気中の粒子が照らされるようになっています。つまり、光は空っぽではない空間を通り、時に拡散し、時に吸収されたりしながらゲーム内での仮想カメラへと向かうのです。これらの処理はすべて現実世界の物理法則に則っており、ステンドグラスの窓ですら空間の空気を照らす光源として計算されています。

クローズアップ

「ディアブロ IV」の目玉要素のひとつが、ゲーム内のムービーを通して語られるストーリーです。カメラをキャラクターに近寄らせる際、皮膚を正確に表現できているかどうかが非常に重要になります。このリリスの翼に見られるように、光は皮膚の裏側から表側へと透過します。現実世界では、光は肌の内側に透過してから内部で散乱し、その後で違う場所から出ていきます。光は透過した肉や血、骨によって変化しますが、これは表面下散乱と呼ばれる物理現象です。この複雑な光の相互作用をモデル化することで、キャラクターの顔に生気を与え、プラスチックのような見た目になるのを防ぐことができます。

左側の画像が現実的な光の当て方をしなかった場合のゲーム内の皮膚で、右側の画像が全体的に現実的な光の当て方をした場合の皮膚です。

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「ディアブロ IV」におけるHDR

– 解説:ケビン・トディスコ、プリンシパル・グラフィックエンジニア

「闇への回帰」を支えるもう一つの新技術が、ハイダイナミックレンジ(HDR)ディスプレイです。

HDRは対応ディスプレイが市場で増えつつあり、大いに話題を呼んでいる技術です。「ディアブロ IV」におけるHDRについて踏み込んだ話をする前に、HDRとは何なのか、そして過去数十年に渡って慣れ親しんできたディスプレイ技術と比べてどういった利点があるのかについてお話したいと思います。

従来型のディスプレイは、特定の範囲の明るさしか表現できませんでした。厳密に言えば、約0.1ニトという下限があったのです。ニトは平面における明るさの単位で、1ニトは1平方メートルにろうそくを1本が存在する際の明るさです。上限は80ニトで、これはあまり明るくない値です。もしブラウン管テレビに馴染みがあるなら、あれの最大の明るさが約80ニトです。この性能は迫力に欠ける傾向があり、高精細(HD)テレビが市場に登場するとディスプレイメーカーは製品の画質改善に努め、結果としてディスプレイの明るさは最大で300ニト程度にまで向上しました。そしてハント効果と呼ばれる現象により、明るくなるほど色の彩度が高く見えます。そのためHDディスプレイでは色彩がよりポップになり、画質も鮮やかに見えます。どんなゲームをプレイする上でも好ましい要素です。

HDRディスプレイでは、明るさの範囲が現時点で最大10,000ニトにまで向上しているほか、OLED技術により画面の任意の部位にリアルな黒(True Black)を表示させることが可能となりました。これらの進歩は、SDR基準では必要だったレンジ圧縮を行うことなく、ゲームエンジンにおけるHDR基準の内部レンダリング結果を直接ディスプレイに出力できるようになったことを意味します。明るさが向上しただけでなく、「ディアブロ IV」にとってより重要な点は、完全な闇をも描写できるようになったことにあります。

それでは、このことがどのようにゲームに反映されているか見てみましょう。以下のシーンでは、着色ビジュアライザーを有効にしてディスプレイに出力される明るさのレンジがわかるようにしています。1つ目の画像が、続く2つの画像がどのような基準で色分けされているかの説明となっています。

以下の1つ目の画像は、「ディアブロ IV」をSDRディスプレイで表示した場合です。

次に同じシーンをHDRディスプレイで表示した場合と比較してみましょう。

HDRでは画面の一定範囲をTrue Blackで表示できており、全体的に大幅に暗くなっている点にご注目ください。なぜSDRでは同じシーンが大幅に明るくなっているのでしょうか?SDRディスプレイでは、映像にトーンマッピングという手法を使って明るさの最低値を下限である0.1ニトまで上げる必要があり、最初のスクリーンショットでは影をそのようにして表示しているのがその理由です。レンジ圧縮を行うと、ほかの部分がすべて影に飲み込まれないよう、シーンの影以外の部分の明るさを上げることにもなります。この問題は俗に「黒つぶれ」と呼ばれるもので、私たちはSDRディスプレイの場合はトーンマッピングを行うことで発生を防いでいます。

対照的にHDRでは、ダンジョンの薄暗い照明をより正確に再現し、影の中でも完全な闇になっている部分を描写することさえ可能で、それにより「ディアブロ IV」のダークでゴシック調な雰囲気が一層高まっています。

HDRに関するオープンベータからの変更

オープンベータ中、黒レベルがHDRディスプレイ(特にOLEDのもの)が実現できるよりも高く表示されてしまう問題が発生していました。私たちのチームは、これはカラールックアップテーブルにおける標本配分を補助するはずだったログ機能が原因だと結論付けました。このログ機能は、カラーキューブ全体への標本配分において大きな役割を果たしますが、数学に詳しい方であれば20は1であり、2-10でもまだ0.000976で、決して0には到達できないことに気付くでしょう。実際のところ、バグにより本作がフレームバッファに入れることができる最小のカラー値だったため、0.000976というのは非常に大きな影響を持つ数字でした。ディスプレイメーカーが追加のイメージ処理機能をSDRTVに持たせているため、この種のディスプレイではそういった値を受け取っても黒に近い表示になります。しかしHDRTVは、そういった値をより直接的に解釈します。0.000976という値はHDRディスプレイ上では約0.07ニトの明るさと解釈されますが、これは疑似的なゼロを実現できるOLEDの下限値を大幅に上回っており、ゲーム内で暗闇の中にあるあらゆる物体が異様に明るく表示されることになります。幸い、この問題の修復はサーバースラムに間に合わせることができました。

オープンベータからサーバースラムまでの間に行ったそのほかの大きな変更としては、HDR専用の新たなトーンマッピングカーブの導入があります。HDR基準の内部値を直接ディスプレイに出力するというのは、カメラで写真を撮ってフィルターをかけずに投稿するのに似ており、少々色あせているか、一様にコントラストか鮮やかさが欠けているような見た目になります。アートチームが精査した新たなトーンマッピングカーブを導入することで、HDRで表現したかったコントラストとカラーの彩度を実現できるようになりました。おそらく、以下の砂漠のシーンが一番わかりやすいでしょう。1つ目の画像はトーンマッピングを適用していません。

そしてこちらは、同じシーンでHDR用トーンマッピングを有効にしたものです。

違いはごくわずかですが、2つの画像をよくよく見比べてみると、トーンマッピングを有効にした画像ではコントラストが向上して砂が色あせた感じが軽減され、より砂らしく見えるようになっているのがわかるでしょう。

また色の鮮やかさについても、僅かではありますが重要な影響を与えています。以下のシーンの2つの光源にご注目ください。

画像の右側の光源は自然な見た目ですが、一番明るいエリアのコントラストが若干弱くなっています。次に、HDR用トーンマッピングを有効にした同じシーンと見比べてみてください。

この場合も、僅かではあるものの非常に重要な効果を発揮しています。左側の光源についてもオレンジ色の輝きの赤みが強くなり、光に照らされているエリアの彩度が若干向上しています。これらの変化は、SDRとHDRの全てのディスプレイ上で一律に同じ見た目、同じ印象になるようにする上で非常に重要でした。

地獄の調整

私たちはSDRとHDR両バージョンの「ディアブロ IV」がデフォルトで美麗な見た目になるよう努力していますが、ディスプレイや室内の環境照明の違いを考慮し、オプションで調整することもできるようにしています。以下はHDRでの調整画面で、ブラックポイントや明るさ、ホワイトポイントを変更してゲームのビジュアルを好みに応じて調整可能です。

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テクニカルアートによる橋渡し

– 解説:アーロン・アイクマン、リード・グラフィックテクニカルアーティスト

グラフィックテクニカルアートの仕事は、エンジニアとアーティストの間の橋渡しをすることにあります。アーティスティックなシェーダーとプロシージャルなアート生成を調和させるというこの目的のために、ローレベルレンダリングのディティールでバーテックス(頂点)を用いて最終的にピクセルを画面に表示させています。

シェーダーに関する作業のほとんどは、アルベドやラフネス、ノーマル、アルファ、そしてエミッシブなどといった物理ベースマテリアルの値を出力するピクセルシェーダーについて発生するものです。シェーダーの作成を何かになぞらえるとしたら、データにアクセスし、データの出力前に修正を加える一連のステップを用意することと捉えられるでしょう。ここで言うデータへのアクセスとは、エンジン外でのテクスチャのサンプリングを意味することが多いですが、興味深いのはそのデータが混成される場合です。

ビジュアルエフェクトで一例を挙げると、タイリングノイズテクスチャを組み合わせることで、フレーム毎にテクスチャを作成することなく、漂う霧や猛火、あるいは毒だまりを作り出せます。また、2次元の方向情報を持つテクスチャを使うことでノイズテクスチャを歪ませ、さらなるバリエーションを持たせることも可能です。

サンクチュアリのシェーダー

キャラクターは単純なシェーダーの要素だけではなく、それが炎上や毒状態、隠密などのステータスを表現するシェーダー機能と組み合わせられる点が興味深いと言えます。さらに環境との動的な相互作用という点では、キャラクターは雨が降ると濡れ、室内に入ると乾くようになっているほか、戦闘中は、使用したスキルによっては血まみれにもなります。また、リアルさを高めるため、至近距離のキャラクターのシェーダーには高精細なテクスチャが統合されます。

環境シェーダーについても、指向性合成や適応型テクスチャスケーリング、ディゾルブなどさまざまな技術を適用しています。指向性シェーダーは、サーフェス(表面)がどの方向に向いているかをもとにして各種テクスチャ(例えば雪に覆われた岩など)を合成でき、また環境アセットの縁や穴の部分のカラーやラフネスの値を変更する際には、湾曲率のデータを利用できます。プロップシェーダーは、エミッシブの要素を使って発光させ、インタラクト可能なオブジェクトへの注意喚起を促せます。またテレインシェーダーはたくさんのタイル可能テクスチャを複雑に合成し、自然な印象の地面を作り出せます。シェーダーが複雑になりすぎないよう、私たちは複数のテクスチャがまとめられたバーチャルテクスチャを作成しました。これでレンダリングするフレーム毎にテクスチャを合成せずに済みます。

ウォーターシェーダーは、幾つかのピクセルシェーダー技術を用いて現実を模倣しています。アーティストはこれでノイズテクスチャのレイヤーマスクをペイントし、徐々に歪ませることができます。また水面下ではシミュレートされた光が屈折して歪みを発生させ、水深に応じて色がさまざまに変化します。さらに、キャラクターは水とインタラクトすることも可能で、プレイヤーやモンスターが水を通り抜けるとそれに合わせて跡が残ったり泡が発生したりします。頂点シェーダーはサーフェスの頂点の位置を動かすことができますが、これは海の波が海岸に押し寄せたり、スキルによって爆発が起きた時を見てもらえばわかりやすいでしょう。

頂点シェーダーと言えば、多くの環境アセットは演算にもとづいて何が動くのかを決め、それ以外をスタティックメッシュで表示しています。キャラクターやスキルの影響を受けた木の葉が動いたり、風によって草が波打ったり、肉の塊が脈打ったり、血の球体や手足がうねったりといったことは、いずれもシェーダーのデータや計算を通じて行われているのです。

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サンクチュアリの拡張性

– 解説:サミュエル・デルモン、シニア・グラフィックエンジニア

「ディアブロ IV」は、Windows PCと2世代の家庭用ゲーム機で動作するように開発されています。このマルチプラットフォーム環境に対応するため、私たちはさまざまなシステムを実装してエンジンに拡張性を持たせ、各デバイスで求められるフレームレートを尊重して可能な限り最高のゲームプレイ体験を提供しつつ、クオリティを維持できるように図っています。

「ディアブロ IV」はメモリの制限、そしてCPUやGPUの処理能力などPCや家庭用ゲーム機の性能を考慮しつつ、実行中のデバイスに適したレベルで動作させることができます。例えば、メッシュやテクスチャなどのアセットは精細感を落とした設定で読み込むことができ、シェーダーやVFX、ポストエフェクト、そしてそのほかのシステムについても同様です。各設定を調整することで、プレイヤーはパフォーマンスより画質を優先したり、あるいはその逆の設定もできるようになっています。

PC用オプションの解説

「ディアブロ IV」のエンジンは、お使いのPCのハードウェアに最も適したグラフィック設定を自動的に選択します。プリセットは低、中、高、ウルトラの4つから選べますが、別のプリセットを選び、好みに合わせて画質やフレームレートを微調整するという選択肢もあります。ただしそういった調整はメモリの使用量やプロセッサーへの負荷などとトレードオフになるため、各設定がどんな影響を及ぼすのか理解することが重要です。

解像度

パフォーマンスに大きく影響する要素のひとつが、ゲームが描画される解像度です。PCでプレイする場合、「解像度のパーセント」スライダーに基づいてより低い/高い解像度で世界が描画されたのち、最終的にプレイヤーが使用しているモニターやウィンドウの解像度に合わせて再スケーリングされます。

「解像度のパーセント」を下げるとゲームの内部的な解像度が下がり、画質がぼやけるのと引き換えにフレームレートが向上します。一方で「解像度のパーセント」を上げた場合は内部的な解像度が上がり、パフォーマンスが低下し、より多くのメモリが必要になるのと引き換えに、より多くのピクセルが描画されるようになります。そのように設定することで画質と精細度は向上し、ジャギーも軽減されます。

PC版では、デフォルトの方式以外にもさまざまなアップスケーリングの方法を選ぶことができます。一例としてNVIDIA DLSS 3では、低解像度で世界をレンダリングしつつ、画質のロスを最小限に抑えて最終的な解像度を上げられます。また家庭用ゲーム機では、アップスケーリングと動的な解像度の管理を組み合わせることで常に良好なフレームレートと画質を維持することができます。

ゲーム体験のための設定の最適化

「テクスチャのクオリティ」のオプションは、メモリの使用量とシームレスなゲームプレイに最大の影響を与える設定のひとつです。クオリティは4種類の中から選べますが、ここではウルトラと高に絞って解説します。最高設定であるウルトラを使用するにはBattle.netのインストールオプションメニューで高解像度アセット(High-Resolution Assets)を選び、さらにシステムに最低32GBのメモリがインストールされている必要があります。ウルトラ・クオリティは4Kモニターでの使用が最適ですが、その場合より多くのメモリが使用されます。オプション「高」は1440pか1080pの解像度のディスプレイに適しています。「テクスチャのクオリティ」を下げるとより低解像度のテクスチャが読み込まれ、パフォーマンスが向上してメモリ使用量が低下する代わりに、テクスチャの見た目がぼやけます。

「シャドウのクオリティ」も同様に、メモリ使用量に大きな影響を与えます。この設定を下げるとメモリ使用量が低下してパフォーマンスが向上しますが、太陽とフィールド上の光源両方によって発生する影のシャープさが低下します。

メモリが心配な場合は、「テクスチャのクオリティ」と「シャドウのクオリティ」の両方を下げることをお勧めします。メモリ消費量に影響を与える設定はほかにもありますが(例:地形ジオメトリのディテール)、大部分はその影響は大きなものではありません。各オプションのさらなる詳細については、設定メニューでご確認ください。

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ローンチ時点での家庭用ゲーム機でのパフォーマンス

「ディアブロ IV」は複数の家庭用ゲーム機でリリースされます。各家庭用ゲーム機において最高のクオリティで楽しむために最適だと思われる設定を選定し、以下に記載しています。各解像度とフレームレートは、Xboxの各シリーズとそれらに比肩するハードウェアにおけるパフォーマンス指標です。

Xbox:

  • Xbox Series X: 4K、60fps
  • Xbox Series S: 1440p、60fps
  • Xbox One X: 1440p、30fps
  • Xbox One S: 1080p、30fps
  • Xbox One: 1080p、30fps

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今後について

グラフィックを高めるための取り組みはこれで終わりではありません。開発チームはローンチ後も引き続き新機能を導入するほか、既存の機能についても改善や最適化を継続します。皆さんのフィードバックをお待ちしていますので、ぜひ「Diablo IV Forums」にて皆さんの意見をお聞かせください。とは言えひとまずは、「ディアブロ IV」に芸術的な不吉さを実現しているグラフィックに関するディープな解説を読んでくださったことに、お礼を申し上げたいと思います。お付き合いくださりありがとうございます。

それでは、サンクチュアリでお会いしましょう!
- 「ディアブロ IV」チーム


NVIDIA DLSS 3で、サンクチュアリでの旅を一層充実させましょう

上記のように、NVIDIA DLSS 3はPC版「ディアブロ IV」で利用可能なアップスケーリングの選択肢のひとつです。NVIDIA DLSS 3を利用することで、GeForce RTX 40シリーズのグラフィックカード使用時のフレームレートを向上させ、地獄の炎を一層激しく燃え上がらせることができます。DLSS 3を有効にしたい場合は、こちらのページの一番下までスクロールしてください。詳しい説明をご用意しています。

なお、「ディアブロ IV」に対応したGeForce Game Readyドライバーが登場しており、GeForce Experienceの「ドライバー」タブかGeForceのウェブサイトからダウンロード可能となっていますので、お忘れのないようお知らせしておきます。

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