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「ディアブロ IV」のシステムデザイン(パート2)

「ディアブロ IV」のシステムデザイン(パート2)

前回のパート1は、BlizzConでお披露目となった「ディアブロ IV」のゲームデザインについて、コミュニティからの疑問にお答えする形でお話しいたしました。まだ目を通していないという方はぜひお読みください。

今回のテーマは、あらゆるアクションRPGにおいて欠かせない要素となるアイテムのコンセプトについてです。複雑かつ誤解を招きやすい要素でもあるので、今回はここにトピックを絞ってお話したいと思います。まずは「ディアブロ IV」の開発チームが指針としている2つの基本方針について説明します。

>第一に、アイテムはカスタマイズ性を高め、キャラクターに厚みを出すうえで大きな役割を果たす非常に重要な要素である、というのが私たちの共通認識です。「ディアブロ IV」の情報が公になってから、一番話題になっているのもまさにこのトピックです。「ディアブロ IV」のアイテムは奥が深く、やりがいの感じられるものでなければならない、という考えのもと、現在も最優先課題のひとつとして開発を進めています。もう一点、私たちがゲーム全体を通して大切にしている価値観に、「覚えるのは簡単だけど、極めるのは難しい」というものがあります。これはスタッフの多くが筋金入りのゲーム好きになった所以でもありますが、「ディアブロ IV」の開発過程においても、この理念は大切にしていきたいと考えています

第二に、「ディアブロ IV」はシリーズ過去作のアイテムのコンセプトをそのまま踏襲するべきではないという意見に、私たちも同意します。過去作のいいところを取り入れ、改良を加えつつ、「ディアブロ IV」ならではの新要素を導入したいというのが私たちの基本方針です。「ディアブロ II」や「ディアブロ III」をそっくりそのまま真似る気はありません。この点に関しては、皆さんの意見やフィードバックも本当にさまざまで、コミュニティが全会一致で賛成するようなアプローチは存在しないでしょう。

そうした中で、皆さんからいただいたフィードバックをもとに、アイテムのコンセプトに関しては社内でも議論を続けており、現在もさまざまな可能性を探っている段階にあります。今日はその一部を皆さんにもシェアします。何度も申し上げているように、これからお伝えする内容は、どれも開発初期段階のアイデアです。これほど早い段階でこうしたお話をするのは、私たちとしても初めてのことです。開発を進めていく中で見つかる問題点もあるでしょうし、以下の内容がそのまま製品版の最終形になるということもまずないでしょう。それでもこうしてお伝えするのは、私たちがコミュニティを巻き込んだ開発プロセスを目指しているからで、皆さんのフィードバックからできるだけ早く、できるだけ多くを学びたいという思いがあるからです。

それでは始めましょう!


「ディアブロ IV」のアイテム特性

このトピックに関しては、コミュニティでも素晴らしい議論がたくさん交わされていました。互いに相反する意見も多く、それぞれのフィードバックに目を通しつつ、開発チームでも長くに渡って議論を重ねました。その中で2つの結論を導き出しました。まず第一に、アイテムの特性はキャラクターの能力に大きく影響を与えなければならないということ。そして第二に、どのアイテムを装備しようか考えるときに、アイテム特性は選択の妙をもたらさなければならないということです。以前は特定のビルドを想定してそれぞれの特性を設定しており、プレイヤーが追求するビルドに応じて“最適解のアイテム”は異なりました。おおまかな方向性としてはそれで間違っていないと思いますが、究極的にはスロットごとに正解のアイテムを追求していくことになるため、プレイヤーの選択肢が限られているようにも感じられる側面がありました。

こうした点を踏まえ、次のような変更を考えています。

  • マジック(青)、レア(黄色)、レジェンダリー(オレンジ)を含め、アイテム特性の数を増やします。これにより、キャラクターの総合的なパワーの水準に対する、非レジェンダリー特性の重要性が高まるはずです。
  • さらに、次の3つのステータスを新たに導入する予定です。
    • Angelic Power(天使の力):プラス効果(バフや回復など)の持続時間を延ばす
    • Demonic Power(悪魔の力):マイナス効果(デバフや継続ダメージなど)の持続時間を延ばす
    • Ancestral Power(系譜の力):命中時効果の確率(発生率など)が上がる

これらのステータスは「+15 Angelic Power」といった特性として表示されます。また、上記のような恩恵をもたらすほかに、他の特性を強化する条件としての役割も持たせたいと考えています。たとえば、特定の力が足りない場合、アイテムを装備することはできても、その力とリンクした特性の効果は発動しない、といった具合です。

こうした特性がどういうものかわかりやく説明するため、開発中のサンプルをご覧いただきましょう(くどいようですが、こちらは開発中の画面であり、大きな見直しが入る場合があります)。

3種の力には、それぞれに関連した特性が複数用意されています。どのステータスを追求するかによって、Angelic、Demonic、Ancestralのいずれかに狙いを絞るのが得策といえるでしょう。上の例でいうと、「Devastation」スキルのランクを上げるにはDemonic Powerが50、火炎耐性25%を得るにはDemonic Powerが55、「Char to Ash」スキルを2ランク上げるにはDemonic Powerが60必要です。「Crushing Blow」を中心としたビルドを組むなら、Ancestral Powerが少なくとも55は必要で、冷気耐性25%をつけるにはAngelic Powerが40必要となります。

これらの変更は、先ほどの2つの結論にうまく対応したものになると考えています。レジェンダリー・パワーによって通常アイテムの特性が完全に霞んでしまうこともなくなるでしょうし、特性の強さは関連する力を他の装備でどれだけ高めたかによって決まるので、特性そのものを選択する面白味も加わるはずです。自分のビルドにぴったりなアミュレットが見つけたとしても、アイテムの特性はDemonic Powerを必要としていて、現状の自身の装備はAncestral Powerをメインに揃えている…なんていう悩ましい状況もあるでしょう。あるいは、今装備しているアミュレットはAncestral Powerのメインソースなので、新しいアミュレットを装備するとほかのアイテムにしわ寄せが来るかもしれない、ということもあり得ます。

このシステムなら、良いステータスを持ったアイテムは簡単に判別できる一方で、自分のビルドに最適なアイテムを選ぶとなると、じっくりと腰を据えて考える必要があります。キャラクターにとって最適解となるアイテムは、今現在何を持っているのか、そしてそのキャラクターをどう育成してきたかによって変わるのです。単純にネットで正解を探して終わり、といったやり方は難しくなります。

それと同時にこのシステムは、時として最善ではなく次善の選択をプレイヤーに強いるものだとしても、その分だけプレイヤーのアイテムに対する思い入れを強めるはずです。たとえ最善の選択ができなかったとしても、それがキャラクターの存在意義を奪い去ってしまうわけではありません。加えて言えば、このメカニズムは、ゲーム開始時からプレイヤーに完璧な理解を求めるのではなく、レベルアップとともに少しずつ自然な形で導入できるのではないかと考えています。


攻撃力/防御力に関する変更

皆さんのフィードバックを受けて、攻撃力が得られるのは武器のみ、防御力を得られるのは防具のみという形に変更しました。装飾品からは攻撃力も防御力も完全に得られなくなります。それぞれのアイテムに対するイメージをより大切にするため、この変更に至りました。

アイテムの成長をわかりやすく示す手段として、攻撃力と防御力のステータスを活用していきます。アクションRPGの肝は、より大きな力を求める探求です。スキル・ランク、タレント・ツリー、キャラクター・レベルなどと同様に、攻撃力と防御力でアイテムの成長を示すことができます。

誤解を避けるために言っておくと、攻撃力/防御力だけでアイテムの能力が決定するというわけではありません。ただ、そのアイテムが上位のものかどうか、大まかな目安としてプレイヤーに提示することで、「覚えるのは簡単だけど、極めるのは難しい」というゲームデザインの土台になります。キャラクターの最適化を図ろうとするプレイヤーは、攻撃力/防御力に加えてアイテム特性について考える必要があります。なぜなら特性がビルドに及ぼす恩恵は、アイテムの基礎的な攻撃力/防御力を上回るからです。攻撃力や防御力だけを見てアイテムを選ぶのは、まず最適なプレイ方法とはなりませんが、新規のプレイヤーにとってはわかりやすいひとつの目安として機能します。

大事なことなのであらためて言いますが、アイテムはキャラクターの能力を決定する一要素にすぎません。スキル・ランクやキャラクター・レベル、タレント・ツリー、そしてエンドゲームの成長システム(こちらも開発段階)といった形でパワーソースを分散させるのが私たちの目指すところです。


エンシェント・レジェンダリーの代替

前回の投稿では、皆さんからのフィードバックを受け、エンシェント・アイテムの変更を検討しているとお伝えしました。その後検討を重ねた結果、現状の形でのエンシェント・レジェンダリーは完全に廃止することにしました。

新たな案は、いくつかのフィードバックポイントをもとにしたものとなっています。ひとつがレア(黄)・アイテムの有用度の調整、そしてもうひとつがエンドゲーム装備の選択肢の深化と複雑化です。

まず、新たなタイプの消費アイテム(名称未定)を導入します。他のアイテム同様、このアイテムはモンスターを倒すと手に入ります。エンドゲーム終盤でしかドロップせず、レジェンダリー特性がランダムで1つついており、非レジェンダリー・アイテムにその特性を移すことが可能です。

これには次のような意図があります。

  • プレイヤーはゲームプレイを通じて、まず通常のレア・アイテムやレジェンダリー・アイテムに触れ、バラエティ豊かな特性に一通り触れた後で、終盤以降にさらなるアイテムのカスタマイズを楽しめる
  • これにより、エンドゲームのアイテムに過度なパワーインフレをもたらすことなく、新たなゲームプレイを提供する
  • 優れた特性を持ったレア・アイテムは常に有用性を保ち、形骸化しない


さらなるフィードバックを!

何度も恐縮ですが、ここでお話ししたことはどれも最終形ではないということを、最後にもう一度だけお伝えしておきます。今回ご紹介したアイデアのほとんどは、まだゲーム上でテストすらしていません!今回のようなアプローチについて、またアイテムの種別に関する全体的な方向性について、皆さんからの建設的なフィードバックを引き続きお待ちしております。こんなに早い段階でこれほど詳細な内容をシェアするのは初めてですが、皆さんからどのような感想が寄せられるのか、とても楽しみにしています。

皆さんのご理解とご協力にあらためて感謝申し上げます。

デヴィッド・キム
リード・システム・デザイナー

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