オーバーウォッチ2

ディレクターの視点:タンクと今後のバランス調整について

Aaron Keller, Blizzard Entertainment

皆さん、こんにちは!前回の「ディレクターの視点」から少し間が空いてしまいました。ここ数か月、更新頻度が低めになってしまい申し訳ありません。皆さんに情報を伝えることは、私たちチームの優先事項です。今後も情報発信に努めていきます。

今回はタンクについてお話ししましょう。もっと厳密にいうと、皆さんの間でよく議論が交わされているタンクについて、私たち開発者の視点から掘り下げていきたいと思います。

シーズン9になってから、タンクが厳しい状況に置かれているという意見を耳にしています。これには私たちも同意見です。シーズン9以前のタンクの立ち位置が完璧だったという訳ではありませんが、今のタンクのほとんどに「硬さがない」と言いましょうか…。両方のサポートヒーローの援護がないとキルされてしまうという状況が多く発生しているので、タンクとサポートが1組で行動せざるを得なくなり、ゲームプレイに制約が生じてしまっています。

この問題は、シーズン9から導入した「Tankiness」(硬さ、タンクらしさ)というストレートな名称の新指標にも統計的に表れています。この指標は大まかに説明すると、実際に重ねたデス数と本来あるべきデス数の比率を表したものです。デスが想定に沿っているかどうかを判断するための指標はTankiness以外にも沢山あるのですが…ここでは詳細を控えます。とにかく言いたいのは、皆さんが感じるタンクの弱さがデータ面でも裏付けできているという点です。

シーズン9で実施した大変更の主な目標の1つが「高いバースト・ダメージとヒーリング両方への対処」だったこともあり、タンクに硬さがなくなることをまったく想定していなかったという訳ではありません。ですが例の変更後、変動がほぼゼロだったレッキング・ボールを除くタンクに、他のロールのどのヒーローよりも大きな変化が生じる形となりました。ヘッドショット・ダメージの低減をはじめとする最近導入した調整のおかげもあり、タンクの硬さは少しだけ戻りましたが、本来意図する硬さを生み出すまでに至っていません。

ここ最近のシーズンで導入した一律的な変更、たとえば弾のサイズ拡大、タンクに導入したヘッドショット・ダメージとノックバックの減衰パッシブ、全ヒーローに導入したライフ回復パッシブなどは現在でも気に入っています。チームでは現在、今後のバランス調整の軸をこの一律的な変更のままとするのか、ヒーロー個別の調整に移すのかで議論が続いています。以前よりも効果を弱めたダメージ・ロール・パッシブの導入などの小規模な一律変更についても検討していますが、今後はヒーロー別の調整を中心に展開したいと考えています。個別調整には、一律変更よりも劇的にパフォーマンスを変えられるポテンシャルがあるだけでなく、「ラインハルトはシールドを展開することで、タンクならではの硬さを発揮する」といったヒーローごとの持ち味を明確にするうえでも効果的です。

タンクに加えられる調整もこの路線変更に沿ったものになります。現在、タンクの硬さを増やすべくさまざまな調整を考案している最中ですが、これまでと異なり、ヒーロー別に調整していきます。ヒーローのアビリティやキャラクターに沿った個別調整ができれば理想的です。たとえば、先ほど名前が出たラインハルトを例に挙げると、シールドのライフを増やすことで、硬さと個性の両方をさらに引き出せるでしょう。タンクの調整には現在、調整担当チームが一丸となって最優先的に取り組んでいます。シーズン11の中盤かシーズン12にその成果を反映できればと考えていますが、詳しい変更点は導入が近づき次第、詳しくお伝えしていきます。

今の話は、私たちがいま議論を重ねているバランス調整全体のアプローチにも関連しています。バランス調整は単にパワーの合計や勝率だけで調整できるものではなく、数値では捉えられない細かな差異を感じ取る力が特に要求されます。ダメージ量やキル数、デス数のような無数に存在する統計値だけなく、ピック率やそのヒーローが使用されるスキル・ティア、地域、プラットフォーム、そしてそれ以上にヒーローのデザイン・コンセプトやコミュニティの意見が調整内容を決めるうえで重要です。最近のメタの変動をきっかけに、ニッチとされるヒーローの調整に対する私たちの捉え方の違いが浮き彫りになりました。このゲームには、勝率とピック率が高くなってもコミュニティで特に問題にならないヒーローが存在します。たとえば、勝率60%は私たちにとって高すぎる値ですが、ラインハルトがこの域に達しても、コミュニティ内から不満が出ることはほとんどありません。ですが、ロードホッグが似たような値(最近は54%に到達)に近づいた時のコミュニティの反応は何と言いましょうか…違います。コミュニティでは「フェア」と考えられるような、少なくとも不満が出にくいヒーローとそうでないヒーローは、この例のように存在します。プレイするうえで高いレベルが要求されるヒーローには、メカニズム面で特に注意が必要です。私たちとしては、ヒーロー全員の競技性を維持すると同時に、特定のシチュエーションで特定のヒーローがピックに適するという環境を大切にしたいところですが、今は特定のヒーローが他を圧倒しないよう、積極的かつ適切なタイミングでそのヒーロー調整していくのが、ゲームにとっても、私たちにとっても、より健全な策なのだろうと考えています。

以上を踏まえたうえで、シーズン11開幕直後のバランスを最後に総括しましょう。

  • タンク:抜きんでたパフォーマンスを発揮するヒーローはいないものの、上位勢として挙げられるのは、D.Va、シグマ、ウィンストン、ジャンカー・クイーン、ラインハルト、ザリア(この6人の勝率は50~55%)
  • ダメージ:ファラが引き続き高いパフォーマンスを発揮(勝率は約58%)。リーパーとメイの勝率がそれぞれ55%、50%と上昇した一方で、ソジョーンの勝率は急落(約44%)
  • サポート:ロール全体のバランスは安定的。イラリーのパフォーマンスも大幅に改善し、勝率が数ポイント上昇(55%に到達)

今週の「ディレクターの視点」は以上です。また数週間後に新しい記事を投稿するので、どうぞご期待ください。引き続き、シーズン11を楽しんでいただけると幸いです。ともに素晴らしいゲームを作っていきましょう。