オーバーウォッチ2

ディレクターの視点:「5v5対6v6」の議論に触れる

Aaron Keller, Blizzard Entertainment

皆さん、こんにちは!最近、皆さんの間で6v6に関する議論が熱くなっていますね。特にこの数週間、前回の「ディレクターの視点」を投稿し、Twitter(X)で6v6について話すとお約束してから、議論がヒートアップしているようです。ついに迎えた今回の記事…これから詳しく語っていきます。本題に入る前に、先にお伝えするべき点を書いておきましょう。

今回のテーマはとても複雑で繊細なだけでなく、このゲームの中核に大きく関わっています。「オーバーウォッチ」のプレイ人数に関する意見は皆さん人それぞれでしょう。我々「オーバーウォッチ」チーム内の意見も似たようなもので、コミュニティのさまざまな観点を濃縮したかのような議論がチーム内でも繰り広げられています。この記事が私たちにとっても、チーム内で話し合い、皆さんとこのゲームを作り上げていくうえで重要な前置きとなれば…と思いつつ、今からこの話題に触れていきたいと思います。

あと3つほど先にお伝えすることがあるので、ここに記しておきます。まずは文章の量について。今回の記事は通常よりもかなり長いです。こうした記事の音読を動画などで行っているコンテンツ・クリエイターさんは注意してください。文章が多すぎて確実に声が枯れます。この記事の要点を先に知りたい方には、項目「今後の方針」から読むことをおすすめします。次はこの記事を書く目的について。私は「5v5と6v6のどちらを好きになってほしいか」、「5v5と6v6のどちらが経験上優れているか」という話をしたいがためにこの記事を書くわけではありません。「オーバーウォッチ」はあくまでもゲームです。そして皆さんが「楽しい」と感じる要素も、個人の趣向、スキル、経験に基づいて大きく変わります。最後の3つ目は、この記事で触れる情報について。チームの人数に関する議論はすでに「オーバーウォッチ」コミュニティ内で何年も続いています。皆さんがまだ把握していない情報もあれば、すでに知っている情報もあるかと思います。以上の3点について留意しつつ、この記事を読んでいただけると幸いです。では、本題に少しづつ入っていきましょう。まず始めに、情報の整理も兼ねて、現在の5v5のフォーマットに落ち着いた経緯をお話しします。

過去の変更に関するおさらい

これまで、フォーマットの大変更は3回ありました。1回目は「オーバーウォッチ」のリリース直後に実施した「ヒーロー制限」です。この制限が設けられるまで、6人のゲンジや6人のラインハルトといった具合に、1つのチームに同じヒーローを何人も入れることができました。私の記憶が正しければ、チーム4(開発チーム)内部で行われた最初のトーナメントでトップに君臨したのは、1人のウィンストンと5人のゼニヤッタからなるチーム、通称「クィンストン」でした。ゼニヤッタのオーブの回復効果は、ゼニヤッタがチームにいる分際限なく増やせるので、それはもう、見ものであったと同時に戦慄を覚えたものでした。

チーム内のヒーローの重複は、バトル関連の開発目標がまだ4人のヒーローにしか立っていなかったこともあり、「オーバーウォッチ」の最初期において必須といえる要素でした。ですが、ヒーローが増えていき、重複への依存度が減るにつれて、「バランス」という新たな問題が浮上しました。「オーバーウォッチ」の各ヒーローのアビリティは個性豊かなだけでなく強力です。同じアビリティを畳みかける戦略は面白さに溢れる一方で、バランス調整をより一層難しくしていました。今でこそ「ダブル・バリア」という言葉がポピュラーになっていますが、その当時は2つどころか6つまでバリアを同時展開できる仕様。「イモータリティ・フィールド」を6つ一気に発動するというとんでもない戦略すらも実行可能でした。たしかにこの戦略の多様性には魅力を覚えますが、ヒーロー個人の力を大幅に削ってまで戦略のバラエティとバランスを両立する気は当時の私たちにありません。そこで私たちが考案したのが、チーム内におけるヒーローの重複を制限する「ヒーロー制限」でした。この制限のおかげで、同じアビリティの畳みかけという問題は見事に解決し、マッチの品質とバランスも向上しました。もちろん、戦略の自由度が狭まり、「トレーサーを使いたくても、誰かがトレーサーをもう選んでいてできない」といったヒーローの選び方に関する問題も生まれましたが、私たちがこの時に編み出した「マッチの多様性、そしてプレイヤーの自由度と戦略を狭めることで、マッチのバランスと競技性を確保する」という考え方は、その後もチームの方針となりました(この方針については、この記事内で何回かまた触れます。どうか頭の片隅に置いておいてください)。ヒーロー制限は、今でも導入してよかったと思っています。仮にいま、以前と同じような状況に立たされたとしても、同じ決断に至ってたでしょう。以降に導入する2つの大変更もメリットに富んでいましたが、デメリットに対するメリットの大きさという点においては、このヒーロー制限が今でもベストといえます。

2回目の大変更は、「オープンキューからロールキューへの移行」です。それまでどんなロールを選んでも構わないルールでしたが、チームをタンク2名、ダメージ2名、サポート2名(「2-2-2」)で構成する条件が、このロールキューへの移行に伴い追加されました。どんなロールでもよかったオープンキューのころは、選べるヒーローが多い分、さまざまな構成でマッチに挑めましたが、同時にロール間の人気度が極端に異なることに起因する問題も数多く発生していました。当時も現在と同様に、プレイヤーがマッチで選ぶロールとしてダメージが最多、タンクが最少だったので、あまりのダメージの人気ぶりから、ダメージ5、6人のチーム編成が当たり前だったのです。

ですが、ロールが偏っているチームよりも、3つのロールがきちんと含まれているチームの方が高いパフォーマンスを発揮します。それゆえ、チーム内のロールの偏りは対戦チーム間の強さの偏りにつながり、やがてその偏りがチームの誰かにタンクやサポートを押し付けようとするトラブルへと発展しました。また、チーム内のロールの偏りは、バランス調整と新ヒーロー導入の面でも大きな障害となりました。各チームのロールの偏りにあわせてバランスを調整するのは至難の業。新ヒーローを導入するにしても、無数に存在するチーム編成とアビリティのコンビネーションを考慮するとなると、かなり難しいものがあります。私たちがロールキューに移行した目的は、チーム内のロールの偏りを解消し、こうした問題に対処することにありました。

実際、ロールキューに移行したことで、こうした問題の多くが解決すると同時に、いくつかの相乗効果が生まれました。たとえば、それまでプレイヤーの総合スキルに基づいていたマッチメイキングにロール別の評価が導入されたことで、スキルがロールごとにかなり異なるプレイヤーのマッチの品質が大幅に向上しましたし、ロールごとのアイデンティティと役割も、チームが3つロールで必ず構成されるようになった結果、より明確になりました。

ですが、デメリットもまたロールキューにはありました。それは待ち時間の大幅な増加です。

ロールキューが導入されるまでは、似たようなスキル帯のプレイヤーを12人集めることさえできればマッチを編成できました。しかしロールキューの導入後は、4人の同スキル帯のプレイヤーをロールごとに集める必要が出てきたため、一番人気のないロールの待機数の比率に応じて待ち時間が変わるようになりました。つまり、待機プレイヤーがどれだけいようと、最も不人気なタンクの参加者がダメージやサポートよりも少なければ少ないほど、待ち時間がどんどん増えていくわけです(後ほど、この問題を詳しく解説します)。  

チームもタンクの比率を増やして待ち時間を緩和しようと、さまざまな策を講じました。たとえば、ダメージとして待機中のプレイヤーのうち、タンクで遊んだプレイヤーから優先的にマッチメイキングに組み込む「優先パス」システムの導入もその1つです。このシステムは導入した直後に一定の効果を挙げましたが、その効果も数週間で薄れていきました。タンクで遊んだプレイヤーにトレジャー・ボックスとXPをプレゼントするオファーも実施しましたが、これも効果が出ずじまい。時間を追うごとにダメージの待機時間が少しずつ減っていきましたが、これはオープンキューのライバル・プレイが登場して一部のプレイヤーがそちらに流れていったことと、長い待ち時間にうんざりしたプレイヤーが離脱したことで生まれた結果にすぎません。

ロールキュー導入の弊害はほかにもありました。先ほどご説明したように、チームはプレイヤーの自由度と戦略を狭めることで、マッチのバランスと競技性を確保していく方針をとることにしました。ゲームプレイをさらに安定させるうえで、チームごとのロールの構成を「2-2-2」に制限することは理にかなっています。ですが、さらなる安定化は同時にゲームの展開自体の"均一化"も生み出しました。ロールを問わないチーム構成のころは、メタもバラエティに富んでいましたし、ロール自体をマッチ中に変えられたので、試合の流れを大きく変えるきっかけや、面白さにあふれていました。ロールが制限された環境下でも、同じロールの別のヒーローに交代できる余地などはあるので、ある程度の変化や面白さを生み出せますが、当時ほどのバラエティはありません。ロールキューはヒーロー制限と同じく、OWをOWたらしめる「ヒーローを選べる自由」をさらに犠牲することでメリットを得ようと導入された施策といえます。しかしながら、その成果はというと、ヒーロー制限ほど大きかったと言い切れません。本来の問題をある程度解決しつつ、ロールキューほど締め付けない適度なシステムとは一体何か…。こちらについては、後ほどあらためて語りたいと思います。

フォーマット、3度目の大変更

上記の問題と待ち時間に対処するべく私たちがとった3度目の大変更が「6v6から5v5への移行」です。本来の章とは別に見出しを設けるのも不自然ですが、わかりやすく説明するために、これから以下の3項目にわけてお話していきます。

  • 5v5に移行した理由
  • 5v5移行後の待ち時間
  • チームの6v6に対する考え

それでは、チームの人数を変えた理由からまいりましょう。

5v5に移行した理由

5v5へと移行するに至ったわけはたくさんあります。

「オーバーウォッチ 2」のリリース当時、「プレイヤー個人の自由度が5v5の環境下でどの程度広がるだろう」とチーム内で話し合っていたことを覚えています。「オーバーウォッチ」はチーム競技ともいえるゲームです。マッチに勝つには、プレイヤー同士の協力が不可欠。チームの息があっていないと、ストレスを溜めることになります。6v6のマッチには特にこの傾向が見られ、どちらかのチームのアルティメットが貯まるまで膠着し続けるというケースがかなりありました。いや、厳密にいえば「役割上、常に高出力の回復・ダメージ低減のサポートを受ける傾向にあるタンク、それも2名を突破するに十分なアルティメットのコンボを発動できるようになるまで膠着し続ける」と言った方が正しいかもしれません。上手くいったときの楽しさはものすごく大きいものの、上手くいかなかったときのストレスもまた尋常じゃないくらいに激しい。それが6v6のマッチでした。この6v6の激しいストレスを、高揚感の上限を少し下げつつ緩和することが、5v5の導入時に掲げた目標の1つでした。 

「オーバーウォッチ 2」への移行にあわせてFPS要素にも重きを置くことにしたので、ダメージの緩和とクラウド・コントロール(CC)を少なくして、敵を撃ちやすくすることも重要でした。プレイヤーの動きを制限するCC系のアビリティが立て続けに起これば、プレイヤーの活動が一定時間制限されることもあります。相手のアビリティを5秒間封じるソンブラの「ハック」、相手を凍結できるメイのメイン攻撃、ブリギッテの「シールド・バッシュ」、オリーサの「ストップ!」、シグマの「アクリーション」…これらの停止技が状況によっては、1人のプレイヤーに連続で襲い掛かることもあり得るわけです。たとえこれらを立て続けに受けたのが生存率の高いタンクであったとしても、受けた時のストレスを考えれば、ライフが底をつく前に精神面がやられることでしょう。こうした要素も5v5への移行に関わっていました。 

また6v6の頃は、ダメージヒーローのプレイヤー間で「コンビネーション技が強力なタンクと、高い回復力でせっかく与えたダメージを無効化してしまうサポートヒーローの前では手も足も出ない」という不満が出ていました。これは「役割上、アビリティのクールダウンやアルティメットのチャージ率を厳密に管理する必要がある」、「相手を撃ってもバリアに阻まれる」、「相手をダメージを与えられたとしても、キルを取るタイミングがシビア」というストレス要素がからんだ結果生まれた感情といえます。

サポートヒーローのプレイヤーもまた、敵へのダメージや単体での戦闘にある程度時間を割ける今の5v5と異なり、タンクがもう1人いるので、回復する必要のあるライフの総量が多く、ほぼ常時回復に徹する必要がありました。

タンク2名が織りなすコンビネーション、いわゆる「タンクシナジー」も楽しさばかりではありませんでした。ゲームのスピードを遅くすると同時に展開を変える余地を狭め、時には完全に膠着させる要因にもなりました。皆さんはこの元凶としてよく「ダブル・シールド」を挙げていますが、膠着の原因はマップやモードとの相性といった別要素にも及びます。特にチョーク・ポイントのような狭い場所の突破が求められるゲーム・モードでは、アビリティの相乗効果で守りが分厚くなるだけで、流れが完全に止まったかのような状況に陥ることが多くありました。ゲームの展開が早く、ゲームの展開が停止することも、特殊な例を除けば皆無な現在とは大違いです。今は敵チームを団体で押さなくても、ある程度マップを自由に動けるようになったとでも言いましょうか。5v5になってから、チームメイトから離れて敵チームの脇から攻めたり、敵ヒーローとの一騎討ちに挑んだりするFPS的なプレイを展開できる余地が増えましたが、6v6の当時は、互いの背を向き合わせるように一団で移動しながら戦うことが重要視されていました。

6v6には「状況の把握が難しい」という難点もありました。チーム戦の規模が大きくなるにつれて、少ないビジュアル・エフェクトゆえに状況がわかりづらくなるという問題も加味すれば、「オーバーウォッチ」はかなり要求度の高いゲームといえます。マッチの他の参加者が11人の6v6と9人の5v5。9人の方がマッチの状況を把握しやすいのは当然です。

さて、ここまで5v5に移った理由をいくつか述べてきましたが、5v5への移行が生んだ特に大きなメリットといえば「待ち時間の大幅な減少」です。ここで、6v6の頃からどのくらい待ち時間が減ったのか、くわしく見てみましょう。 

5v5移行後の待ち時間 - データと背景情報

下のグラフは、2019年にロールキューを導入した際のライバル・プレイにおける待ち時間と、「オーバーウォッチ 2」になり5v5へ移行した後のライバル・プレイにおける待ち時間をロール別に比較したものです。ご覧のとおり、待ち時間がロールを問わず、5v5への移行を機に減ったのがわかります。最も人気の高いダメージ枠の待ち時間の減り具合は顕著です。 

 RankedQueueTimesChart.png

このように待ち時間が減った大きな要因が、ロールごとの待機プレイヤー数の比率です。皆さんの間から「待ち時間が長いのはプレイヤー数が少ないせいだ」という意見が出てくることもありますが、これは間違いで、実際は3つあるロールそれぞれの待機プレイヤー数に偏りが生じるほど、待ち時間が増加します。プレイ人口の少ないタンクの待機数がほかのロールより少なければ少ないほど、空きのタンク・プレイヤーが見つかるまでの所要時間、ひいては「オーバーウォッチ」プレイヤー全体の待ち時間が伸びるということです。

タンク、ダメージ、サポート間の比率のギャップは、「2-2-2」のフォーマットでプレイした時よりも、タンクが1人少ない「1-2-2」でプレイした時の方が、各ロールの需要の比率に近づく分、はるかに縮まります。なので5v5に移行した結果、待ち時間が短くなったというわけです。 

実際、待ち時間の大幅な減少は、「オーバーウォッチ 2」がリリースされた2022年10月の時点、つまり5v5に切り替わった当初から見られており、ヒーロー別の待ち時間も全体的に、6v6のころとは比べ物にならないレベルにまで改善しました。これもすべて、タンクをチーム構成から1人取り除いたおかげと言っても過言ではありません。グラフのとおり、タンク・プレイヤーが他のロールのプレイヤーよりも少ない状況は、5v5になった現在も同じです。仮にいま5v5から6v6へと切り替えたとしたら、待ち時間が6v6だった当時と同じか、それ以上の水準にまで増えるかもしれません。

要点をまとめましょう。待ち時間は、プレイヤー全体の待機数にかかわらず、ロール別の待機数に応じて変化していきます。ロール間の待機数の差が大きくなるほど、待ち時間は長くなります。この差を作り出している要因がタンク人口の比率の小ささなので、6v6に戻してタンクの比率をさらに下げれば、待ち時間の長さは6v6当時に逆戻りすると予想されます。  

チームの6v6に対する考え

「オーバーウォッチ」はそもそも6v6の構成から始まったゲームです。これまで6v6から離れた理由を書き続けてきましたが、欠点を書き連ねたからといって、6v6に良いところがなかったわけでは決してありません。12人のプレイヤーが集まって生まれるあの狂気と白熱の空間を、今の10人マッチで再現することは、なかなかできないでしょう。12人もいると、マッチがわけのわからない状況に(ときどき)陥りますが、それもまた6v6の魅力の1つでした。今の「オーバーウォッチ 2」も楽しさに溢れています。ですが、あの際限なくハチャメチャで、感情が乱高下する世界は6v6にしかなかったのも確かです。

マッチがハチャメチャだった分、プレイヤーのプレッシャーも今より小さめでした。それに加え、プレイヤーが1人多い分、苦戦しているプレイヤーをカバーできる余地が今よりも多くあり、その「プラスワン」のメンバーもタンクだったので、その影響力は絶大でした。5人構成を上回るライフ量と防衛能力も裏を返せば、すぐに逆転されるような展開が少なく、今よりじっくりとマッチに挑めることを意味していたといえます。

先ほどはタンクシナジーに関する問題点を挙げましたが、タンクシナジーにも「片方のタンクが敵チームを抑えたり押したりしている一方で、もう片方が後方の守備に回れる」というメリットがあります。タンク同士のチームワークはその複雑さゆえ、学ぶのに膨大な時間を要しますが、その分奥が深く、今でもごく少数ですが、一部のプレイヤーが研究を重ねているほどです。

6v6におけるタンクの調整の難しさについても書きましたが、それは5v5においても同様です。この1年半、試行錯誤を繰り返しながら調整を進めた結果、「オーバーウォッチ 2」のタンクのバランスは高い水準にまで上がりましたが、それでも、例のマウガのように1人でも能力の抜きんでたタンクヒーローが出てくると、タンクが1名に限られている現状ではかなりの脅威を感じることがあります。

今後の方針

ふう…前置きがやっと終わりました。大学でエッセイを書いた時よりも頑張ったような気がします。ここまで長々と書いてきましたが、つまり私たちが言いたいのは、プレイヤーの皆さんがプレイしたいと思う「オーバーウォッチ」をこれからも作っていきたいということです。

私たちは先述の問題点を考慮して、これまで5v5のゲームプレイ改善に力を注いできました。ですが、皆さんにサービスを提供するのが私たちの使命です。皆さんの興味関心やフィードバックに基づいて、偏見なく自分たちの決断を再評価することは「オーバーウォッチ」を最高の形で皆さんに届けるうえで重要ですし、私たちも従来の要素を無視して半永久的な変更を強引に導入するよりは、さまざまな可能性を探りつつ変更を加えるやり方を採っていきたいと考えています。 

今後はこの方針に沿って、異なるチーム編成のフォーマットが試せるイベントをいくつか実施できればと思っています。コミュニティからもほんの1、2回くらいですが、「さまざまな形式の6v6をテストして、データやフィードバックを集めるのもいいのでは?」という声が出ており、これには私たちも同意見でした。現在チームは皆さんのフィードバックを参照しつつ、どのように公開テストを実施しようか検討を重ねています。さて、そのテストの実施時期についてですが…さまざまな理由が絡みあって、すぐに実現できないことが予想されます。

すぐに実施できない一番の理由は、ゲーム自体のパフォーマンスです。12人が1つのマッチに集まるので、フレームレートやメモリの使用率といった技術的要素をさらに最適化していく必要があります。「オーバーウォッチ 2」になってから、私たちはパフォーマンスに影響を及ぼすような追加要素とアップグレードを数多く導入しました。味方のアウトラインの実装や、オプション扱いだった回復ビジュアルのデフォルト化、技術的に難易度の高いアビリティの追加、UI、ヒーロー、マップのビジュアル面でのアップグレードもその1つです。これらを機能させつつ6v6を行うとなると、旧式のシステムで動かした際のパフォーマンスが低下する可能性があります。「オーバーウォッチ」はご存じのとおりハイスピードなゲームです。すべての対応プラットフォーム上でゲームを滑らかに動かすことが、ゲームプレイの品質を確保するうえで重要になります。期間限定テストそのものは近いうちに実施できるかもしれませんが、実施するうえで重要となるゲーム全体のパフォーマンス改善にどれほどの時間を要するのかは、まだ不明です。調査中の段階なのではっきりとは言えないものの、パフォーマンスの底上げには、その作業規模の大きさから、最低でも数シーズンかかると見ています。

もう1つの理由として挙げられるのが、待ち時間です(…このパンドラの箱を開けざるを得ないのかと思うと不安になります)。もし一定数のプレイヤーが6v6の存続を望めば、待ち時間へどのように対処するかが問題になってきますが、チームにはこの問題を解決できなかった過去があります。もちろん、アイデアがまったくないわけではありません。ですが、温めておいたアイデアが実際に機能する保証がないことも確かです。長い時間待たされてまで6v6をプレイしたい人がはたして本当にいるのかどうか…。もしいたとしても、待ち時間の問題を解決せずに導入するとなれば、大きなリスクを伴うでしょう。また「オーバーウォッチ 2」には、5v5しか経験したことのない新プレイヤーが数千万人もいます。待機プレイヤーが少ないからといって、今のフォーマットを好む方に6v6を押し付けるような真似をしたくはありません。

このような課題はありますが、公開テストが実現すれば、有益な情報をたくさん得られることでしょう。テストは数週間にわたるかと思います。コミュニティの6v6に対する関心度を測ると同時に、他の要素(5v5、アーケードなど)への影響度を調べることで、「オーバーウォッチ 2」全体の相関図における6v6の立ち位置、そして今後取るべき方針を把握していくつもりです。5v5か、6v6か、あるいは両方か…どのような道を選ぶことになるかは別として、皆さんの声をゲームに理想的な形で反映できるよう、テストから得られた情報を精査したうえで「オーバーウォッチ」の未来を探っていきたいと思います。

じつは、大きな発表がもう1つあります。ご存じのとおり、「オーバーウォッチ」のリリース以降に導入された変更のほとんどが、マッチの多様性を削るような要素を併せ持っています。一部の方から「マッチ間のバラエティが乏しく、どのマッチも同じように感じる」、「マッチが代り映えしなくなったのは5v5のせい」という意見があがっていますが、私たちは5v5そのものを変えなくても、以前起きていた問題を別の方法で解決することで、マッチの多様性をある程度取り戻せると考えています。そこで、問題の解決方法を練り直すべく、6v6とは別のテストをあわせて実施したいと思います。もし、チーム構成を固定してしまう今のルールほど厳しくなく、かといってオープンキューほど緩くもないチーム編成方法を見つけ出すことができれば、戦略の自由度を大幅に削ることなく、付随する問題を軽減できるかもしれません。こちらの検証は、シーズン13の間に最低でも1回、「クイック・プレイ:HACKED」のイベントとして行う予定です。もちろん、このロールキュー見直しのアイデアにも欠点はあります。ですが、ここまで書いた膨大な量の文章を読めば、このゲーム(というより、あらゆるゲーム)の方針にデメリットがある程度ついて回ることがわかるかと思います。このトレードオフの関係を念頭に置いたうえで、私たちの今後のテストを見守っていただけると嬉しいです。

おわりに(…という名の新たな序章に向けて)

皆さんのフィードバックは、新たなアイデアを生み出すきっかけになると同時に、そのアイデアをゲーム内でテストするモチベーションにもつながっています。もちろん、シーズンごとに新規プレイヤーが大勢生まれている「オーバーウォッチ」の、このコミュニティ全体がメリットを享受できるよう、新アイデアの導入は慎重に検討していくつもりです。

シーズンが変わってもずっとプレイしたい…そんな「オーバーウォッチ」を皆さんに届けられれば、チームとしては本望です。

今回の記事(いや、私たちの主張をまとめた声明文と言った方が正しいですが…)は、議論の口火にすぎません。今後も5v5と6v6に関する話題に触れていくとともに、チーム内で現在練っている計画の詳細をお伝えできればと思います。

最後に、貴重な時間と情熱を「オーバーウォッチ」のゲームや開発チーム、そしてコミュニティに注いでくださる皆さんに、あらためてお礼を申し上げます。

情熱あふれる皆さんとともに「オーバーウォッチ」の将来を作り上げていけることを、とても光栄に思います。これからも、どしどしフィードバックをお送りください。コミュニティ内から出た意見を含め、この先に向けて役立てていきます。今後数か月の間に新たな情報をお届けできるかと思いますので、どうぞお楽しみに。それでは皆さん、ともに…力をあわせて、素晴らしいゲームを作っていきましょう。

 - アーロン・ケラー