ディレクターの視点:シーズン6におけるヒーローのバランスを振り返って
皆さんこんにちは!今週の「ディレクターの視点」は、アーロンに代わってリード・ヒーローデザイナーのアレックがお届けします。ヒーローたちやそのバランスの変化、それらから私たちが学んだことについてお話しするにはちょうど良い機会でしょう。また、今後予定しているソンブラとロードホッグの調整についても少し触れていきたいと思います。
イラリーと「幅を持たせた強さ」
まずはイラリーからまいりましょう。イラリーの実装に際してのコンセプトは「幅を持たせた強さ」です。新登場のヒーローにはインパクトを持たせたいと考えています。それにはいくつか理由がありますが、最も重要なのは、新ヒーローによって環境に変化を起こすことです。強烈な新ヒーローが登場することで、他のヒーローの立場に変化が起こり、新しくもユニークなチーム構成の余地を生み出してくれます。逆に言えば、インパクトの足りない新ヒーローを実装した場合、新シーズンに入っても代わり映えしないという印象を与えてしまいます。
大きなインパクトを持った新ヒーローの実装は簡単なことではありません。新しくヒーローを登場させるということは、新たな可能性を持った新ヒーローと、これまで多くの時間を共にしてきた従来のヒーロー、そのどちらを選ぶかという選択をプレイヤーの皆さんに迫ることになるからです。新しいものを試すことと勝利すること、どちらも大切ですよね。この葛藤を軽減するため、今後も基本的に「幅を持たせた強さ」を念頭に置いた上で新ヒーローを実装し、皆さんがその特徴を把握している間、必要に応じて調整していきます。とはいえ、そのヒーローのアビリティのメカニズムが尖っていたり、賛否を巻き起こすであろう場合(たとえばウィドウメイカーを再実装するような場合など)は、このアプローチに対してより慎重になることもありえます。
イラリーは強力なヒーローを目指していたため、実際にゲームを変えるほどのインパクトを持つキャラとして登場させることができた点については満足しています。ただ、その強力さがどこから来ているのかは分析しなければなりません。彼女のパワーの多くは当初「ヒーリング・パイロン」とダメージ出力に向けられていました。「ヒーリング・パイロン」は、使用したらそのまま放置できる自動回復装置であるため、その有効性に比べて試合中にあまり目立ちません。最初にこれを調整することにした理由はいくつかあります。第一に、こう着状態のような状況を作りかねないという点です。次に、相手の前線を突破してパイロンを攻撃すること自体がすでに困難なため、あまり頑丈であるべきではありません。そして最後に、受動的なパッシブ・アビリティとして、彼女のメイン攻撃やサブ攻撃に比べれば即効性は劣るものであると考えた点です。今後も引き続き、彼女の存在感を保持しつつ、イラリーのバランス調整を行っていきます。まだまだ調整の余地はあると感じていますので、シーズン7ではサブ攻撃の回復に関する調整を実施する予定です。
バランス調整のレイヤー
次は、最近のバランス調整と、シーズンスタートからミッドシーズンのアップデートに関するアプローチの仕方についてお話ししましょう。「オーバーウォッチ 2」バランス調整を実施する際、いくつかの目標が存在しますが、いつも念頭に置いている事柄があります。個別のキャラか全体の環境に対してかに関わらず、ヒーローの調整はゲーム体験としての改善のために行うということと、シーズンをまたいでもゲームを新鮮に感じてもらうことの2つです。これらの目標に焦点を当てながら、ゲームプレイにおけるヒーローのループサイクルに有意義かつインパクトのある変化をもたらす調整を目指しています。数字の変更を伴うこともままありますが、これはシーズンごとに恣意的に同じ数字を上げ下げすることを意図したものではありません(例:ソルジャー76のメイン攻撃のダメージ)。そのため、バランス調整とは、出る杭をすぐさま打つかのようなレスポンス的な場合もある一方で、「このアビリティの変更が自分のプレイにどう影響するだろう?」といった疑問を呼び起こす変化でもあるのです。
ヒーローに対してレスポンス的な調整ではない変更を考えるとき、私たちは普段、ひとつの疑問または包括的な目標を考えることから始めます。先日のザリアの調整を例に取ってみましょう。この場合、ザリアが自分自身のためにバリアを2回張るのではなく(一般的な行動になっていましたが)、味方にバリアを張るための動機付けが狙いでした。どうすれば十分な動機付けとなるのか?それをゲーム内で目立たせるには?普段こういったケースでは、ヒーローの調整を複数のレイヤー(層)に分けて実施し、結果的に前述の目標を達成するという方策をとっています。ザリアの場合、味方にバリアを張るクールダウンを短縮+味方のバリアサイズを拡大+味方のバリアのライフを増加、という3枚のレイヤーとなっています。この方策は複雑さという問題を抱えてはいますが、レイヤーを重ねることでそれぞれが相乗的に機能し、特定のアビリティに極端な変更を加えることなく目標を達成できるのです。また、これは将来微調整の必要が出てきたときにも役立ちます。重ねた小さなレイヤーを、必要に応じて取り除けばいいだけなのですから。素早く元に戻すべき状況を鑑みても、このレイヤー方式は今後も活用に値するアプローチとなります。ザリアについては、クールダウン時間はそのままに、味方のバリアのサイズとライフを変更前に戻す予定です。
近日実施
シーズン6の現環境をよく見てみると、バスティオン、オリーサ、トールビョーンの使用率が上がっていることがわかります。中でも突出しているのがバスティオンです。あらゆるランク帯で存在感を示し、その勝率はミラーマッチ以外で約55%と想定以上の数字となっています。バスティオンのメイン攻撃と「タクティカル・グレネード」のリライアビリティが向上した点は満足していますが、近日中に「強襲モード」に変形した際のアーマー回復を削除する予定です。この回復効果があるせいで、不利な位置取りにある時ですらバスティオンの生存能力が非常に高くなっていたからです(この記事を書いている最中、シーズン7に先行して調整を実施することが決まりました)。
その他、シーズン7開始時に、オリーサの「フォーティファイ」のダメージ軽減、トールビョーンのメイン攻撃のリカバリー時間、シーズン5で実施されたメイの変更が差し戻されます。メイの変更の差し戻しについて、重要な点は一連の変更がゲームプレイの改善に寄与しなかったことです。以前のミニゲームの要素を彼女のメイン攻撃に導入しようとした意図は良かったのですが、結果として、特にタンクにとってメイを相手取るにはストレスが溜まる上に、プレイしていても有効とは言えないものになってしまっていました。
最後に、今後予定している調整について軽くご紹介します。シーズン7開始時にソンブラの調整が実施されます。その狙いには、次のようなものがあります。
- 交戦時、今よりも決定力のあるヒーローにする
- 全体的にアビリティのアクティブ感を向上させる
- 現在のハッカーとしてのアイデンティティとプレイスタイルは維持する
ロードホッグについては現在最終調整中で、シーズン7のミッドシーズン・パッチで調整が実施される予定です。彼の変更の目的は次のようなものです。
- 味方チームを守り、スペースを確保する能力を強化する
- 全体的なアイデンティティとプレイスタイルは維持する
- 性能が一撃必殺の可能性に依存しないようにパワー配分を変更する
ソンブラとロードホッグの調整に関する詳細は、新たなアビリティのお披露目も含め、今後追って公開予定です。では、今回はここまで!いつもご支援とフィードバックありがとうございます。またゲーム内でお会いしましょう!