Warcraft Rumble

開発者インタビュー:シニア・アニメーターのケアリン・フールニンクとの談話

Blizzard Entertainment

「ウォークラフト ランブル」のマジカルな世界に命を吹き込むにはチームが必要です。シニア・コミュニティマネージャーのサイレス・ネコールがシニア・アニメーターのケアリン・フールニンクに開発のプロセスやインスピレーションについて聞きました。

まずは自己紹介と「ウォークラフト ランブル」の開発におけるご自分の役割について教えてください。

ケアリン・フールニンク:こんにちは!「ランブル」チームのシニア・アニメーター、ケアリン・フールニンクです。私はオランダ出身ですが、本作の開発初期からチームに参加しています。キャラクターに命を吹き込んで、どういうゲームにするかというアイデアを、楽しくてわかりやすいゲーム内のアニメーションに落とし込むことが自分の仕事です。

アゼロスの世界は広大です。それを今ゲーム内で見られるような小さな世界に縮小するには、どんな苦労がありましたか?

ケアリン:リリース当初から自分は「World of Warcraft」をプレイしていて、最近では「Wrath Classic」で週に何度もUlduarをレイドしています。自分の好きなシリーズの開発に携われることのみならず、そこから新たな何かを作れるのは夢のような思いでした。

「ランブル」のアニメーション制作で最優先したことのひとつが、小さなモバイルデバイスの画面で何が起こっているのかをプレイヤーに明確に伝えることでした。ひと目見ただけでユニットの種類や、そのユニットが何をしているかを把握できる必要があります。そのため、特徴的なシルエットを持たせたり、大げさなポーズ派手な動作を取らせるように心がけました。アニメーター陣だけではカバーしきれないところを、ビジュアルエフェクトとオーディオのアーティストが大いに手助けしてくれたおかげで、アゼロスの巨大な世界をミニチュアサイズに落とし込むことができたんです。

ゲーム内のキャラクターに個性や特徴をできる限り詰め込むように心がけましたが、ユニットを一番アップで見ることになるのは、何かの要素を解禁したときや、キャラクターがレベルアップしたときの「おめでとう」の画面ですね。そうしたタイミングは、キャラクターに個性を追加するチャンスなので、とても重要でした。ゲーム内のアニメーションが専門の自分は、映像作品のアニメーション制作については不案内だったので、やりがいがある挑戦となりました。経験したことがない分野に挑む必要があり、学習と成長が求められるため、このようなアニメーションに携われることを嬉しく思っています。「おめでとう」系のアニメーションのなかでも、特に気に入っているのはバロン・リーヴェンデアのものです。ちょっとエラそうで自慢気な感じを出すのに苦心しました。見るからに尊大な感じで髪を跳ね上げるアニメーションで、それを表現しています。

本作の開発に携わっていて、一番楽しかったことはなんですか?

ケアリン:ひとつだけ選ぶのは無理ですね。仕事内容は多岐にわたっていて、その全部が好きですから。新しいユニットにアニメーションを付けて実装するのは特に楽しいですね。チーム内の色んな別の分野の人たちと密接な連携プレーが求められるからです。例えばユニットの開発に当たっているときに、もっと「良くなりそう」なアイデアが思い浮かぶことがあります。デザインチームにそのことを伝えると、大抵の場合はそのユニットのゲームプレイにこちらで変更を加えてよい、という返事がもらえます。というのも、ユニットを楽しくプレイできるようにすることは私たち全員の共通目標だからです。

他にも、キャラクター試作の初期段階が楽しいですね。基本的には、WoWの既存のキャラクターが題材となります。WoWのキャラクターには凝った設定がすでに存在しているので、それを忠実に再現したいと思っています。私はずっとWoWをプレイしていますが、そんな自分でも物語背景に合ったアニメーションを付けられるように、必ずそのキャラクターのバックストーリーを詳しく調べます。自分の仕事としては、そのキャラクターの核となる要素に注目し、それを拡大して見せて、モバイルデバイスの小さな画面でわかりやすく伝わるようにすることが重要です。

最初のキャラクターリサーチが終わると、ポーズの試作に入り、その個性を洗練させていきます。「圧踏のクリーグ」は特に面白いポーズを持ったユニットです。「WoW Classic」でレイドに寄与するために、ダイアモールの敵を掃討してクリーグの「Stout Beatdown」を買うという筋は記憶に新しいですね。「~クリーグ」はいつも楽しくて幸せそうだけど、頭が良すぎて、すぐに他のオーガを怒らせてしまう印象でしたね。その感じをキャラクターのポーズで表現するのは実に楽しかったです。

アニメーションを伝わりやすく表現するのが難しかったキャラクターはいますか?

ケアリン:ゲームの観点からユニットがわかりやすくなるように、コンセプトアーティストとキャラクターモデラーが素晴らしい仕事をしてくれました。彼らはユニットの色が混じり合わないようにして、体の各パーツを識別しやすくし、明確なシルエットを持たせるようにしてくれています。なので、キャラクターのアニメーションを作成する際には、わかりやすさで苦労することはほとんどありませんでした。

場合によっては、ユニットを少し上向きに回転させて顔が見えるようにして、顔の表情や感情を強調するといったことはありましたが。例えば、「ホワイトメイン」はカメラの方を見上げています。そういうふうに少し回転させないと、プレイヤーからは「ホワイトメイン」の帽子しか見えなかったので。

色々なゾーンやキャラクター、アイテムの個性について考えたとき、プレイヤーに伝えるべき鍵となる要素はなんですか?それはどうやって伝えましたか?

ケアリン:本作のエンバイロメントやボスとの遭遇を開発する際には、WoWを感じさせることが重要で、またそれがとても楽しかったです。チーム内の誰もが自ら進んでフィードバックを出して協力し合っていました。エンバイロメントやユニット、ボスとの遭遇を改善するアイデアが思い浮かぶたびに、そのアイデアをチームのメンバーに提案しました。ほとんどの場合、私が提案したことは取り入れられたものの、まれにそうならないこともあり、そういうときは十分な理由がありました。

すべてはお話しできませんが、以下はその例です!

  • 「怒りの猿」マップのゴースト・マッシュルーム。
  • 「光の希望教会」マップのブラック・ロータス。
  • それから、バンシーが叫ぶ「おめでとう」のアニメーションは「Battle for Azeroth」トレーラーのシルヴァナスにインスピレーションを得ています。

開発中に何か面白いことはありましたか?

ケアリン:それは多すぎますね!「動物変身」のヒツジにアニメーションを付けていて、「飛行型ユニットが動物変身した場合はどうなるんだろう?」ってチームで話題になってたことがあります。結果、宙に浮いた毛玉から足が突き出ているアニメーションができました!アニメーションを作りながら、笑いが止まりませんでしたね。

ついでに言うと、かなり前から、誰かがオフィスのフィギュアにギョロ目を付けるいたずらをしていて、未だにそれが誰の仕業なのか誰も知らないんですが…それについては私じゃないことをこの場を借りて宣言しておきますね。

特に難しかったことはありましたか?もしあるなら、それをどのように克服しましたか?

ケアリン:本作に合ったアートスタイルを見つけることが一番困難なチャレンジでしたね。最初は、原典である「Warcraft III」を忠実に再現しようと考えていましたが、その凝ったアートスタイルはモバイルデバイスに上手く落とし込めないことがすぐに判明しました。画面上のユニット数が増えると、何が起こっているのかよくわからなくなったんです。様々なスタイルを試してみて、ゲームプレイとアートのバランスを取り、ウォークラフトのキャラクターを小さなミニチュアアクションフィギュアにする現在のスタイルに落ち着いて、「愉快な大乱闘」というキャッチフレーズが誕生したんです。それはアートやアニメーションの共通テーマとなっています。

ご自身が携わったアニメーションのなかで、プレイヤーがすぐには気付かないようなものは何かありますか?

ケアリン:アニメーターとして作業する際には、アニメーションソフトウェアとゲームエンジンを何度も行ったり来たりします。アニメーションが近くで見るとかっこよかったとしても、それがゲーム内ではどう見えるのか?アニメーションをテストするたびに事新たにマップを立ち上げていると時間がかかります。そこで私は独自にテストマップを作成しました。これを使えば、ユニットを配置したり、ユニットをキルしたり、歩くアニメーションサイクルや能力を確認することができます。このマップには独自の「殺人光線」があり、これは電撃連鎖の呪文ですが、死亡率が100%なんです。

ほとんどのユニットには複数の歩くアニメーションが用意されています(ですが、皆さんがまったく気付いていないなら、それは私たちの狙い通りです!)。

私たちは定期的にチーム内で「ハッカソン」を行っており、チームの各メンバーが2日間かけてゲーム内で自分が見てみたいアイデアを開発することができます。その際、ほとんどのメンバーはチームを組んで協力して作業に取り組みます。そうしたコラボレーションから素晴らしいアイデアがたくさん誕生し、ゲーム内に取り入れられています。たとえば、「大荒野」の「病気のガゼル、ゴーリュー」とかね!

注目のイースターエッグはありますか?

ケアリン:はい。でも、教えてしまうと、イースターエッグになりませんよね!

将来、「ウォークラフト ランブル」に追加したい、お気に入りのWarcraftキャラクターはいますか?

ケアリン:セナリウス、マノロス、レディ・ヴァッシュはリーダーかボスとして登場させたいですね!

それ以外には、シリシッド(虫型クリーチャー)を登場させたいです。アニメーションを考えるのも楽しいでしょうが、自分の組んでる毒&スタンビルドを発展させるチャンスになるので。

今、ゲーム内でどんな部隊で乱闘を繰り広げていますか?

ケアリン:自分のティリオン部隊が大のお気に入りです!でも、最近はケーアン・ブラッドフーフのデッキも楽しんでいます。正直に言うと、リーダーは誰を取っても独自の愉快なシナジー効果があるので、よく部隊を入れ替えていますね。

ミニをゼロから作成する過程の詳細については、Blizzardの公式ニュースサイトで以前に公開された記事、ウォークラフト ランブルの舞台裏:「ミニ」をつくるをご覧ください。