マーロック・ホームズとナスリア城殺人事件
ナスリア城殺人事件
作:Christie Golden&Brandon Easton
死と謀り、そして名探偵の織りなす背筋の凍る物語、「ナスリア城殺人事件」。マーロック文学の名作にして、演劇の演目にうってつけ。さあさ、この「ナスリア城殺人事件」の台本を手に、マーロック・ホームズとドクター・ワトフィンとともにナスリア城の様々な場所を巡って手掛かりを探し、10名の主要な容疑者たちを尋問するご準備を。友を集めて鳥打ち帽子を目深に被るのです。物語はこの先もさらなる展開を見せることでしょう。「ナスリア城殺人事件」の謎を、あなたは解明できるでしょうか?
キャンプファイヤーがパチパチ言う音、遠くで遠吠え、危険な森の生き物の金切声。不気味なナレーションが始まる:
ナレーター
ようこそ、人畜男女の皆さん。今宵も、ゾクリと来るお話に震える準備はよろしいですか?あなたはツイてる…かも。
(邪悪な笑い)
勇気を振り絞ってお聞きください。お届けする物語は…
稲妻と雷鳴!
ナレーター
ナスリア城殺人事件
ドラマチックなオルガンの音楽がクレッシェンドする。
ナレーター
ナスリア城。そこは夜な夜な冷酷な視線が飛び交う、危険な場所です。そこではどんな強い力の持ち主でも、どす黒い運命の歯車を逆に回すことはできません。そして、ガーゴイルが届けに来たパーティーの招待状を受け取ると大概、碌なことにはならないのです。
不吉な音楽が盛り上がる。
屋内:大広間。パーティーの音が聞こえる――呟き、グラスを鳴らす音、適当な音楽など。
ナレーター
晩餐会の招待客たちが大広間に集まった後、レヴェンドレスの支配者であるデナスリアス陛下は、赤い霧にも似たアニマが注がれた黄金のゴブレットを掲げました――おそらくは、自分が最悪の仇敵を招いてしまったなどとは夢にも思わずに!
チーン、チーン:フォークで金属を叩く音。観客が静まり返る。
デナスリアス
ようこそ、慎ましき我が家へ!諸君は盛大な宴と、無害で無邪気な室内遊戯を通じて、親睦を深めたいと願っていることだろう。例えば、私はこう考える…諸君はそれぞれ、何を望んで私の招待を受けてくれたのだろう?富か?知識か?私と一緒にいるところを見られる名誉か?あるいは、このデナスリアスが容赦なくアニマを溜め込んでいるという、下劣な噂を聞いたからだろうか?確かに、アニマは心地好く酔わせてくれる…病み付きになるほど良い…そして想像を超える力を与え――
デナスリアス、自分がもう少しで噂を肯定しそうになったことに気付き、咳払いする。
デナスリアス
ともかく、先ほど言った通り、今宵が皆にとって忘れられない夜となることを願っている。さて、私は夜のお楽しみの準備のため、最後の仕上げをしなければならない。ディナーの用意が整うまでの間、どうぞ自由に我が家を見て回ってくれたまえ。
デナスリアスの蹄の音が遠くに去って行く。
ドアがバーン!と閉じられる。
ナレーター
客たちは主人が去ったことに戸惑いつつ、陛下の提案に従い、しばらくの間、思い思いに城と敷地内を見て回っていました…
しかし突然――
ゴブレットが床に落ちる騒音。アニマが穏やかな風のようにふわりと宙に漂う音。
スチュワートの悲痛な叫び声。
スチュワート
誰か、誰かー!デナスリアス陛下が殺された!
ドラマチックな音楽!
屋内:ダイニングホール
ナレーター
本当でした――デナスリアス陛下は、ダイニングホールの床に倒れていたのです。強き御方の身に、いったい何が?!10人の招待客が――今や全員が容疑者ですが――陛下の周りに集まって来ました。
走る足音や蹄音、ドアの開け閉めの音、驚き息を飲む音。
ナレーター
しかし、この恐るべき行為を行ったのは誰なのか?
謎めいたブローカー、アーティフィサーの「ザイモックス」か?
ザイモックス
ああ、彼はいい商売相手だった。
ナレーター
実にピッタリな称号を持つイセリアル、大悪党「ラファーム」か?
ラファーム
なんということだ、我が親愛なる最高の友、ドナトリオ陛下が!
ナレーター
オークの女男爵、「ドラカ」か。
ドラカ
(嘲るように皮肉に)なるほど、あんたは彼ととても親しかったようだね、ラファーム。
ナレーター
あるいは、同じくマルドラクサスから来た別の二人――
もう一人のオーク、目的があって訪れた「殺戮者オルグラ」か?
オルグラ
彼が死んだだと!彼から…もらうものがあったのに。
ナレーター
もしや、ナーガの「ヴァッシュ女男爵」でしょうか?
彼女もドラカ同様、かつてスパイの殿堂の一員でした。
レディ・ヴァッシュ
(皮肉っぽく)誰が彼の死を望んだりするものかしらねぇ?
ナレーター
それとも、陛下の盟友で、力に飢えたリッチの「ケルスザード」か?
ケルスザード
我は衝撃と怒りに打ち震えている!何たる不注意だ、デナスリアスよ?我々の温めていた陰謀は、もはや一つも実現するまい。
ラファーム
(共感したように囁く)
最後の部分は口に出すべきではなかったのでは。
ナレーター
殺人者はアーデンウィルドからの二人の来訪者、シルヴァーの「アラロン」、またはティルネンの「セセリー」ということは?
アラロン
なんという悲劇だろう。
セセリー
(葉のような髪をカサカサ揺らす)
我らの女王も悲しまれる…ことはないかも…
ナレーター
まさか、親切なキリアンの招待客、「ペラゴス」のはずはありませんよね?
ペラゴス
このような出来事は例外なく悲劇です…が、彼は聖人君子というわけではなかった…のでは?
ナレーター
忠実なスチュワードの「スチュワート」ということはあり得ないでしょう。それともまさか?
スチュワート
(静かに泣いている)ホーー、ホーーー…おかわいそうに、陛下…ホーー…
ナレーター
招待客たちは皆、疑いの目でお互いを見つめていました。
犯人は…この中にいるのです。
告発が飛び交い始めてから間もなく、稲妻が走った!
ピカッ!
ナレーター
そして雷鳴!
ドォォォーーン!
ナレーター
そして、玄関のドアが開け放たれた!
ドアが激しく開けられた、大きな衝突音。
ナレーター
戸口に人影が立っていました。小さいながら、堂々と。
それは罪なき人には希望を、罪深き人には恐れを抱かせる人物でした。他でもない、彼こそがあの偉大なる名探偵――
マーロック・ホームズ
ムァムグググググァァァルルルルァァァ!
ナレーター
マーロック・ホームズ!そう、彼が来てくれたのです。
友人にして助手のドクター・ワトフィンと共に。
ドクター・ワトフィン
<ゲコゲコッ>
ナレーター
皆、息を飲みました!
誇張された、皆がほぼ同時に息を飲む音。
ナレーター
名探偵らしく、ホームズはすぐさまこの場を仕切りました。容疑者たちは、彼が遺体を調べる間、その場を離れてはいけないと指示されました。
以下、ホームズはセリフが自分に話しかけられているようにムルァァグルムルァァグル言う。
ナレーター
ホームズは、死因を示すものが何も出てこないことに注目しました。彼は陛下の召使たちに頼んで死体を運び出させてから、床にチョークで輪郭を描きました。「どうやって殺したか」の謎を解くには、「誰が殺したか」の謎を先に解かなければならないようです。犯行当時、容疑者たちはそれぞれどこにいたのでしょう?
アラロン
「犬舎」にいたよ。
セセリー
「迷路」よ。
レディ・ヴァッシュ
「泥溜め」よ。
ドラカ
「罪石の墓地」だよ。
ナレーター
ゲームが始まりました!ホームズは城の外の場所から調査を始めることにしました。最初の目的地は…「犬舎」でした。
屋外:犬舎。犬舎内からはガルゴンの猟犬(体が石で出来ている生きた獣)の立てる恐ろしい音が聞こえる。
アラロン
あの時猟師アルティモアはいなかったから、彼には私がいたと証言できない。
でも、ガルゴンの猟犬たちにはできる。
威嚇する怖ろしい音が、好意的な挨拶の音に変わる。
アラロン
(暖かく)また来たよ、君たち。あなたの犬も撫でていいかな、ドラカ?
デスファングの3つの頭がうなる。
ドラカ
ダメ。(マーロックに)次はどこへ、ミスター・ホームズ?
ナレーター
容疑者がたくさん…場所もたくさん。殺人事件を解決しようと奮闘する名探偵は、どんな手がかりを見つけるのでしょうか。もしかすると、ドラカは何か重要なことから彼の注意を逸らそうとしているのかもしれません。彼女のアリバイを確かめるべき時です…不吉な「罪石の墓地」を訪ねるとしましょう。
ナレーター
探偵マーロック・ホームズは容疑者たちを尋問し、彼らの足取りをたどっています。彼がヒレ…いや、足を向けたのは、責め苦を受ける魂やストーンボーンの獣たちの住処である、「罪石の墓地」でした。そこはデナスリアス陛下の殺害を企むような者が潜みそうな場所です…例えば、「ドラカ女男爵」とか?
屋外:罪石の墓地。一行の足音。木々の間を風が吹く。デスファングが地面を掘って、嬉しそうに息を切らす。
マーロック・ホームズ
ムァァグル…ムァフラグググァル。
ドラカ
そうだね、ミスター・ホームズ。「罪石の墓地」は泥だらけだ。
ラファーム
見ろ!手がかりだ!巨大な猟犬の足跡だぞ!
ドラカ
…それはデスファングのだよ。
デスファングが鳴く。
マーロック・ホームズ
ムァグ グリグスルァァグ グラァァァ?
ドラカ
デナスリアスの晩餐会に、不名誉な理由で参加した者も何人かいるのは間違いない。だから、誰か城にもう一度入る者がいないか、見張ってたんだ。あと、デスファングが穴掘りするのにちょうどいい場所だからね。
(デスファングに向かって、「私は犬と話してるの」と示す高いトーンの声で)
だよねぇ?いい子ちゃんはだぁれ?
デスファングは「自分だ!」と、3つの頭全部でうれしそうな音を出している。
ナレーター
ホームズはうなずきました、あたかも他の皆が気付いていないことに気付いたかのように。
一行は次の目的地、「泥溜め」に向かいました…「ヴァッシュ」のアリバイを確認するために…
屋外:泥溜め。泥が泡立つ音、木の軋む音、沼に棲む生き物たちが立てる穏やかな音。颯爽と歩く足音が止まる。ヴァッシュが這いずって出迎える音。
ナレーター
ここは「泥溜め」。新進気鋭の執事たち…少なくとも、ドレッジャーの執事たちが湧き出て来る場所です。この腐敗した場所に凶器を投げ込めば、永久に発見できなくするのは簡単なことです…「ヴァッシュ女男爵」はこの場所がお気に入りのようですが…一体なぜでしょう?
レディ・ヴァッシュ
あそこを見て――私が沼に出入りした跡があるでしょう。泥はとってもお肌にいいの。どなたか、一緒にひと泳ぎしませんこと?
ドクター・ワトフィン
<ケロッ!ケロッ!>
マーロック・ホームズ
(ドクター・ワトフィンにイラついて)マーグル!グリブルグランブ。
レディ・ヴァッシュ
また後で来ましょう、ドクター・ワトフィン。この不愉快な出来事が全て解決してから、ね。
マーロック・ホームズ
ムルァァグル グラァァ ダァァグル マー?
レディ・ヴァッシュ
何を隠そう、「ドラカ」と私は――そして他の者たちも――目の殿堂の破壊を仕組んだのは私たちのホストじゃないだろうか、と疑っていたのよ。
デナスリアスのことよ、もちろん。
マーロック・ホームズ
フルァァムムムム…
ナレーター
奇妙な一団は、続いて「生垣の迷路」へ。
屋外:生垣の迷路
ナレーター
「生垣の迷路」の中では、すぐに自分がどこにいるのかわからなくなってしまうものですよね?そして出口を見つけるのはとても難しい…特に、植物自体が出口を見つけさせまいとするならなおさらです…もしかすると、「セセリー」はデナスリアスを迷路の真っ暗な中心へと誘い込み…永久に閉じ込めるつもりだったのでは。
セセリー
美しいでしょう?
ペラゴス
ええ…ええ、もちろん、とても、あー…きれいです。
ホームズ
ムァグルル…グァグルル ベラック ラァァク?
セセリー
(ため息)ええ。私は冬の女王の代理として出席しました。
彼女はデナスリアスがアニマ旱魃の背後にいると疑っています。私は生垣の植物たちが何か知らないか聞いてみようと考え…その、会話に夢中になってしまいまして。ここの植物たちが証言してくれます。
生垣から軋むような音。
セセリー
ほらね?
マーロック・ホームズ
ムァァァグル ムァァグル…グロァプ。
セセリー
あら。貴方に彼らの言葉が理解できるのでなければ、
どうやって私がここにいたことを納得させろと!
マーロック・ホームズ
(熟考する) フルァァムムムム…
ナレーター
しかし、彼は納得したのでしょうか?
城の外で調査するべき場所はあと一ヶ所だけ。レヴェンドレスで唯一、バスティオンの住民が落ち着いて物思いにふける…あるいは、陰謀を練ることができる場所です。
ナレーター
レヴェンドレスにどんな施設があるだろうかと考えた時、大聖堂はちょっと思い浮かびませんよね?ところがあるんです…「贖罪の大聖堂」が。かつてレヴェンドレスにおける、魂を救済するという誠実な使命の象徴でしたが、最近は…まあ…それほどでも。「ペラゴス」がここに引き寄せられたのは、高貴な過去ゆえでしょうか、それとも不徳な現在ゆえに?
屋内:贖罪の大聖堂。感動的で、心に残る音楽。一行の足音はよりゆっくりで、静か。
ペラゴス
残念ながらホームズさん、あの時は誰も私と同行していませんでしたし、ここで会ってもいません。ここには、デナスリアス陛下がアニマを溜め込んでいるという噂について熟考しに来たんです。それだけです。
オルグラ
それだけ?なら聞かせてくれ…なぜ、わざわざ「贖罪の聖堂」を選んだんだ?贖うべきことでもあったのか?
ペラゴス
(あざ笑うように間を置いて)なぜなら、レヴェンドレスの唯一の大聖堂だからですが?
オルグラ
ああ。なるほど。
マーロック・ホームズ
ムァググル ムァァグル…ブレップ ガァグ…ムァグル ブラァク ブレアァグ?
ペラゴス
もしもデナスリアス陛下が本当にアニマ旱魃を起こしていて…
そして彼が私を脅して来たとしたら…ええ、率直に言って…
自分が何をしでかすかわかりませんね。
マーロック・ホームズ
フルァァムムム…
ナレーター
屋外の調査を終え、ナスリア城に戻ることとなりました…あの恐ろしい場所で何が起きているのか、調査するのです。
屋内:厨房。火がパチパチ爆ぜる音と、大釜がブクブク煮え立つ音。
ナレーター
より具体的には…厨房の中で。厨房から連想するものといえば?例えば栄養、暖かさ、親睦ですね。あるいは、よく研がれたナイフとか、沸騰する液体、炎――おわかりでしょう。
レディ・ヴァッシュ
どういうわけか、パーティーって必ず最後は厨房に集まることになるみたいねぇ?
アラロン
(疲れて、ホームズに)ねえ、これまでで誰か容疑の晴れた者がいるかくらい教えてくれないか?
マーロック・ホームズ
グァァップ。ブレアァグギィ ガアク ムァグググルル。
スチュワート
アラロン様はお疲れのご様子。ホーーっとするお飲み物はいかがです?
さあ、どうぞ!(金のゴブレットをアラロンに差し出す)
マーロック・ホームズ
ムグァルラァァルグ!!!!グリブル ブァァァアアアアク!
手で払う音…それからゴブレットが床に落ちる音。
皆が息を飲む。
アラロン
うっ…今のは痛かったぞ!
マーロック・ホームズ
ムァァァァァグググルルル!!!
スチュワート
はい、確かにこの厨房には聖なるスパイスがあります!そして、それが陛下たちヴェンシアには有害であることも存じております。ですが間違いのないよう、ゴブレットはそれぞれ専用にしています!
アラロン
彼の言う通りだ。ステムに可愛いメダルが付いてる。「アラロン様、これはあなた様のです…ホー」
ケルスザード
(告発するように)だが、スチュワートよ…我は聞いたぞ、貴様がデナスリアス陛下のために特別なものを用意したと言っていたのを!
スチュワート
はい、確かに!これです…嗅いでみてください!
マーロック・ホームズ
(においを嗅ぐ)ブレック!!!!
スチュワート
そうです、ニンニクです!ホームズさんならご存じでしょう、これは陛下のようなヴェンシアには無害です。陛下の好物です…好物でした…ホーー…
マーロック・ホームズ
フルムムム…グラァビィ ムァァァァグリー…ベク ガアア?ガア ブラァグル?
ケルスザード
我は「夜隠の内殿」にいた。
プライベートな部屋だが、どうしてもというなら、ミスター・ホームズ…
屋内:夜隠の内殿。不気味な音楽。
ナレーター
「夜隠の内殿」。ここはプライベートな会話や…計画や…陰謀のための特別な場所…そしてまた、突飛で健全なお楽しみのためのマジ楽しいものを安全に隠しておける場所です!
ケルスザード(続き)
我は善良とは言えぬかもしれんが、忠実ではある。乾杯のあと、デナスリアスは我に内殿に来るよう言っていた。ディナーの後の…親睦に必要な何かを探すためにとな。重要だと言っていた。
ケルスザードは「親睦」という言葉を露骨に軽蔑している。
マーロック・ホームズ
ブラァグリィ?
ケルスザード
このクラシックなボードゲームだ。
紙箱の中でコマがカラカラ鳴る音が聞こえる。1980年代のボードゲームのCMのような安っぽい音楽を流すといいかも。
マーロック・ホームズ
ムァグルグルル、 グレップ ブラァググ ムァググ。
ラファーム
我か?ああ、我が親愛なる最高の友ダナブリアス陛下があのような恐ろしい目に遭っている間、我は…その、ただぶらついていた。これと言って、何の悪意もなくだ。
マーロック・ホームズ
ブレック ブラァグ?ムァググルス…
ラファーム
図書室?(引き攣った笑い)いや、行く必要はあるまい。
屋内:図書室の扉。そこに向かう一行の足音。
ナレーター
図書室――そこは書物と…秘密のための場所。あるいは多分、昼寝の。
ラファーム
(ささやく)ああ、これが図書室への扉だ!
マーロック・ホームズ
(同様にささやく)
ムァァグルル グリーブル ブルァァスック?
ザイモックス
なぜみんな小声で話している?
全員が「シーーーッ!」
バスティオン
(ささやく)図書室だからです。
ラファーム
(憤然とささやく)
扉に挟まっているのは絶対に我の…包帯の破片ではないぞ…
(叫ぶ)
いや、待て、開けるな――
扉が勢いよく開けられる音。皆が息を飲む。この時点から、会話は通常の声の大きさになる。図書室は明らかに無人。
アラロン
(通常の声)あれはやっぱり煙のニオイだったんだ!
スチュワート
私はラファーム様に火がついているのを見ました!ですが水を用意する時間がなく。
ご無事で何よりです。
ラファーム
あれが燃えたのは…
フウーッという音。フェルの炎がパチパチ爆ぜる音。インプがペチャクチャしゃべる音。ラファームが溜め息をつく。
ラファーム
もういい。犯人は我だ。あー、奴らだ。全て白状しよう。我は稀少な呪文書を盗もうとしたのだ。我がやったのだ。
レディ・ヴァッシュ
(笑う)おバカさんね。そんなことで告発されてるんじゃないわよ。あなたは図書館に盗みに入って火事を起こしたことを白状したけれど…それは、デナスリアス陛下の事件当時のアリバイになるわ。
ラファーム
我が…何だと…いやその…その通りだ!見よ、我が包帯は未だに少々くすぶっている。ほらな?
炎がくすぶる音と、ラファームが自分を叩いて火を消そうとする音。
ナレーター
さて、いよいよナスリア城のねじくれた心臓部へと降りて行く時です。まずは遺物庫、そして…鮮赤の深淵へ。
ナレーター
殺人事件の調査は、マーロック・ホームズを非常に暗い場所へ…そしておそらくは、さらに危険な場所へと導きました。「遺物庫」は、間違いなく心の弱い人には向かない場所です。しかし、史上最高の名探偵には、その秘密を暴かれることでしょう。
屋内:遺物庫。
ザイモックス
私はここにいたのだ、あの…事件が起こった時は。
マーロック・ホームズ
ブルァフグル、ブレップ。ムァァグル、グラァブ ベク ムァァァグルル?
ザイモックス
遺物を守るためだ、もちろん。こんなならず者どもが招待されたとなれば――
ドラカ
口に気を付けな。
ザイモックス
――誰かが何かを盗むに違いないからな。
ラファーム
それは我のことだな。我はあるものを盗んだ。なぜなら我は、親愛なる最高の友デナパルーザポルシム…アスを絶対に殺していなかったからだ。
ドラカ
あんた、もう思い出す努力すらしてないね。
マーロック・ホームズ
グァラァグラ バーク ァムァググググ?
ザイモックス
何、これか?絶滅の遺物だ。誰かが…落とした…とか?いや、認めよう、私が盗もうとしたのだ。
マーロック・ホームズ
ムァァァァグル グラブ ブラブ パック ムァァァグググル…クッッッシューーー グラック!
不吉な音楽。
ペラゴス
全員で…行かないといけませんか、ホームズさん?そこには…苦痛に満ちた光景が拡がっていると聞いていますが…
ケルスザード
そこに送られた魂どもは苦痛に満たされているだろう、それだけのことだ。
ナレーター
ケルスザードの言葉は少々控えめなものでした。悍ましき「アギト」を除けば、「鮮赤の深淵」はシャドウランズで最もどす黒い場所です。
屋内:鮮赤の深淵。かすかな泣き声と悲鳴。アニマが渦巻く音。
ナレーター
なぜなら、ここは死者の魂が生前の罪を償わされるための場所なのです…高慢なアニマを抽出される、という責め苦を受けることによって。
アラロン
この場所は好きになれないな…
オルグラ
好かれるためには作られてないからな。拷問のための場所だ。だからこそ、あの時私はここにいたのだ。私は…夫のマンクリックを探していた。
彼がここにいるという噂を聞いていたから招待に応じたのだ、彼を探すために。彼を探せる時間はほとんどなかった。今となっては…もうわからないかもな。
スチュワート
お気持ち、お察しします。
ドクター・ワトフィン
<ゲコッ>
オルグラ
ありがとう、二人とも。
ラファーム
そろそろ行かないか?
ナレーター
ホームズは一行に告げました。何が行われたのか…そして誰がやったのかがわかったと。一行は全てが始まった場所へと戻って来ました…ダイニングホールへ。
屋内:大広間。緊迫した音楽。ホームズは以下のナレーションに重ねて、静かに会話するようにマァグルマァグル言い続ける。
ナレーター
名探偵は倒れた陛下のチョークの輪郭のそばに立ち、彼の推理を説明しました。「今夜はずっと雨でした…しかし、明らかに一行が帰ってきた時のもの以外、泥のついた足跡はなかった。」
アラロン
よかった!つまりあの時外にいた僕たちは…無実だということだ!
ナレーター
ホームズは答えました。「その可能性はありますが、城には秘密の通路がたくさんあります。まだ、皆さんの容疑が晴れたわけではありません。」
デスファングが悲しそうに鳴く。
ナレーター
「オルグラはデナスリアス陛下を殺そうとはしなかったでしょう、」とホームズは招待客たちに言いました。
「彼女には、陛下から夫の居場所についての答えを聞く必要があったからです。」
オルグラ
信じてくれて感謝する、ミスター・ホームズ。
ドラカ
あんたとマンクリックの愛は伝説にもなってるからね、オルグラ。
いつか連れ合いが見つかることを祈るよ。
オルグラ
あなたもそうなるよう願っている、友よ。
ラファーム
うへぇ。早く済ませようではないか、なあ?ご存知の通り、我は殺人については全くの無実だ。つまり残るは、ケルスザード、ザイモックス、そして…
全員
スチュワート?!
スチュワート
ホーーッ、私が?いいえまさか、スチュワートではありません!
ナレーター
ホームズは、デナスリアス陛下の身に起きた事件の犯人が、ついにわかったと宣言しました。犯人は――
マーロック・ホームズ
ムァァグググルルルル!
ドラマチックな音楽!ラファーム以外の全員が息を飲む。
ラファーム
待て…誰が犯人だって?白状するが、我には彼の言葉は一言たりとも理解できていないのだ。
ナレーター
さて、人畜男女の皆さん…皆さんも、誰が犯人なのか知りたいですか?
知りたいでしょうとも。この殺人事件は、あなたが解き明かさなければなりません…
できるのならね…
ナレーターの声が怪物のような声に変化する。そして悪魔的に笑う。
ナレーター
フハハハハ!
ドラマチックなエンディングの音楽。