オーバーウォッチ2

「仲間がいれば百人力だ!」――「オーバーウォッチ」と「Heroes of the Storm」のザリアをデザインする

Blizzard Entertainment

オムニック・クライシスの最前線で戦っていたと思ったら、二柱の神の争いを揺さぶろうとする巨大なマーロックとタッグを組んで戦いに加わったりと、Blizzard作品のキャラクターは、大地をも砕くネクサスの魔法によって見知らぬ世界に飛ばされることがたびたびあります。アレクサンドラ・ザリアノヴァ、通称「ザリア」もそんな大冒険をした一人です。

Blizzard設立30周年を間近に控え、「オーバーウォッチ」と「Heroes of the Storm」のザリアを手掛けたデザイナーたちに、2つの世界で活躍する特徴的なヒーローが完成するまでの過程を聞きました。


ロシアの守護者が「オーバーウォッチ」に登場するまで

Heroes_ZaryaXDesign_Embed_OW-01.jpgヒーローを作るときは、デザインのアイデンティティが固まるまでプレイスタイルや使い心地、そして全体的なコンセプトが何度も練り直されることがほとんどです。ですが、「オーバーウォッチ」のデザインチームがザリアを初期コンセプトから破壊力抜群の武器の使い手に位置づけるまでの過程は、驚くほどスムーズだったといいます。

ザリアを担当した「オーバーウォッチ」のデザイナー、ジェフ・グッドマンは「ザリアは初期段階からダメージを引き受けるタンクとしてデザインしました。最初はダメージを吸収して自身にシールドを張るという路線で考えていましたが、後々に銃をパワーアップさせる方向に落ち着いたんです」と語ります。「タンクをデザインするときの目標の一つは、ダメージヒーローほど継続的ではないにせよ、高いダメージを叩き出せるようにすること。ダメージを食らってチャージを溜めれば溜めるほど攻撃力が上がるザリアは、そんなタンクのコンセプトにぴったりでした」チームは他のアイデアもいくつか試しましたが、アビリティなどはすぐに今の形にまとまり、基本的なデザインも初期段階からあまり変わっていません。

Heroes_ZaryaXDesign_Embed_OW-02.jpgヒーローに最適なアルティメットも通常は試行錯誤を繰り返すものですが、ザリアは違いました。ジェフは「初めて試したアルティメットが『グラビトン・サージ』だったのですが、すぐに当たりだ!とわかりました。調整は何度も入れていますが、最初のテストプレイの段階から『グラビトン・サージ』は特別で、キャラを象徴する技だと確信しました」と当時を振り返っています。チームは付近の味方全員にバリアを張るアルティメットも試しましたが、見た目の情報量が多すぎたのに加えて、「グラビトン・サージ」のようなマッチの結果を左右するほどのインパクトがありませんでした。[グラビトン・サージ]は「それだけ強力だからこそ、今でも全アビリティの中でチャージが一番遅い」のだそうです。このアルティメットは強力なだけでなく、ザリアの堂々とした態度を見事にゲームプレイで表現しています。ジェフによると、「[ザリアの]性格とバックグラウンドは、ゲーム全体のかかってこいよ! という気風を前面に押し出したもの」とのこと。敵チームを一箇所に集め、「役者は揃った。思い切りやろう」と言わんばかりの戦い方が成り立つのは、世界記録を狙えるアスリートにして名高いシベリアの兵士である彼女だからこそです。

現在、ザリアのゲームプレイはわかりやすく、しっかりと確立されており、「オーバーウォッチ」の人気キャラとしてすっかり定着しています。バスティオン、マーシー、シンメトラなど、ゲームの歴史の中でアビリティの性能が大きく変更されたヒーローもいますが、彼女のデザインはほとんど変わっていません。

「Heroes of the Storm」チームは、この安定感抜群のキャラクターをベースにデザインを進めていきました。


いざ、次の戦場ネクサスへ

Heroes_ZaryaXDesign_Embed_HotS-01.jpg「Heroes of the Storm」チームのデザイナーたちは、2016年の「オーバーウォッチ」発売前から早々に、今や看板キャラクターとなったオーバーウォッチの面々をネクサスに登場させる下準備を進めていました。最初にネクサスに登場したのはトレーサーでしたが、ザリアも必ずメンバーに加えたいと早い段階で参戦が決定していたそうです。戦場を駆け回る兵士を「オーバーウォッチ」の世界からネクサスに招く作業を担当したのは、Dehaka、Ragnaros、Cassia、Qhiraなどのヒーローデザインを担当したゲームデザイナーのジェイド・マーティンでした。ザリアはジェイドが「オーバーウォッチ」で最も頻繁にプレイしているヒーローの一人だったのもあり、ネクサスにおけるヒーローデザインを社内のデザイナーだけでなく熱心なザリアファンにも受け入れられるものにしなければならないと理解していました。「ネクサスにヒーローを迎え入れるときには、ファンがキャラクターに期待するものを踏まえてデザインを考えるようにしています。ユーザーの声だけでなく、Blizzard作品と設定マニアである我々チームメンバーの意見にも、同様に耳を傾けました」ファンの期待に沿ったデザインを考えるためには、ユーザーがキャラクターに惹かれる理由を掘り下げなければなりません。「プレイヤーに好かれている部分の核を見つけて、ゲームプレイに反映します。これはデザインの最初期から意識している目標です」

ジェイドと開発チームは、ザリアの基本的なゲームプレイを「オーバーウォッチ」のように攻撃を受けて強くなる、「来るなら来い」というスタイルにすべきだと考えました。それを踏まえ、当初は最前線に立って味方のためにダメージを引き受けるタンクにする予定でした。ですが、「オーバーウォッチ」における彼女のアビリティの特徴が、前線を押さえつつも使い方次第で高い攻撃力を叩き出せる、ブルーザーとのハイブリッドに適したものであることは明白でした。

Heroes_ZaryaXDesign_Embed_HotS-02.jpgもともと一人称視点のシューティングゲームのためにデザインされたキャラクターを、見下ろし視点のゲームに移植するとなると、どうしても諦めなければならない要素がいくつか出てきます。一人称視点のゲームにおける技量の指標である「エイム」の概念もその一つです。こういった技量を活かし反射神経を試す要素を残すため、「Heroes of the Storm」ではザリアのエネルギーオーブを撃ち出すサブ攻撃が、連続発射が可能でプレイヤーの精度に依存するアビリティになっています。これ以外にも、エイムに自信があるプレイヤーへのボーナスとして「Pinpoint Accuracy」のような、敵に技をクリーンヒットさせることでボーナスダメージを与える特性が作られたそうです。

「Heroes of the Storm」のザリアをデザインする過程には、終始「オーバーウォッチ」のデザインチームも関わっていました。2つ目のヒロイック・アビリティ(「Heroes of the Storm」版アルティメット)を作ることになったときは、ジェイドは「オーバーウォッチ」チームと共同で作業を進め、ザリアの開発初期のアビリティ案も検討しました。こうして完成したのが、「グラビトン・サージ」とは逆に敵を跳ね除けるゾーンコントロール・アビリティ「Expulsion Zone」でした。さらにアイデアの出し合いだけでなく、初期のテストプレイに「オーバーウォッチ」のデザイナーを招き、ネクサスでのザリアの使用感が原作に忠実なものかを確かめてもらったのです。


こうして見事に「Heroes of the Storm」でも活躍するヒーローとなったザリアですが、他にも輝けそうなBlizzard作品がないか、今回インタビューしたデザイナー2名に聞いてみたところ、ジェイドは移動速度に難はあるものの、アビリティは「ディアブロ」系のアクションRPGに適していそう、とのことでした。一方ジェフは、「『オーバーウォッチ』でフルパワーのザリアが味方の後衛に突入してくる様は、レイドボスそのもの…」ということで、「World of Warcraft」のレイドボスと答えてくれました。

さすがにトリストラムのダンジョンやシャドウランズに行くのは難しいかもしれませんが、ジェフやジェイドのような開発者の献身によって、彼女はネクサスになじみ、「オーバーウォッチ」を象徴するキャラクターの一人となっています。


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