新マップ「KANEZAKA」
ハナムラ城のお膝元に位置するカネザカは、伝統と現代的な風景が同居する閑静なエリアです。程よく色あせた木造建築や、狐の狛犬が鎮座する神社があるかと思えば、その目の前には高層ビルが立ち並び、昔からある景色と混ざりあっています。「KANEZAKA」には、一風変わったディテールや「オーバーウォッチ」チームへのささやかなオマージュがいたるところに散りばめられています。猫カフェでまったりしたり、地元の怪しげなバーをのぞいたり、ゲームセンター「PACHIMARI FunFun!」のクレーンゲームを盛大に壊すといった楽しみも味わえます。
「KANEZAKA」の開発に携わったファビアン・クリスティン(シニア・ライティングアーティスト)、ティアゴ・クラフケ(シニア・アーティスト)、モルテン・ヘデグレン(シニア・レベルデザイナー)、ディオン・ロジャーズ(アソシエイト・アートディレクター)の4名に、マップのデザインや発想の源、完全リモート環境およびオンライン会議を駆使しながら進めた開発過程などについて聞きました。
どんなゲームやメディアに影響を受けましたか?また、「KANEZAKA」の開発作業にあたって、特にここから着想を得たといったものはありますか?
クリスティン:過去にゲームのシネマティックの仕事をたくさんやっていた関係から、映画の照明を参考にすることが多いです。デザインとテクノロジーの融合や、現実に即したデザインの参考になるという意味で、現代美術やモダニズム建築にも刺激をもらっています。
クラフケ:私は日本の現代的な建築が好きですね。特にSFアニメでそういった部分がどう表現されているのか、関心を持ってます。今回のマップでは、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」と「AKIRA」を参考にしました。
ヘデグレン:デスマッチのレベルデザインに関していうと、近年刺激を受けたゲームは「タイタンフォール」や「Call of Duty」といったシリーズでしょうか。人生通してなら、オリジナル版の「Unreal Tournament」や「Quake III」といった名作にも影響を受けました。私は実際の街の様子からアイデアを得るタイプで、初期の段階からマップレイアウトの核になりそうな場所のことを調べたり、参考資料を集めたりします。今回は京都や東京といった場所を参考にしました。
この業界に入ったきっかけは?
クリスティン:映画や視覚効果の仕事がしたくて、フランスの美術学校で3年間CGを学びました。最初の就職先がゲーム会社で、仕事が面白かったのでそのまま業界に残りました。とにかく自由で、クリエイティビティを存分に発揮できるのがいいですね。
クラフケ:私は「カウンターストライク」のマップや「ハーフライフ」のMODを制作したのがきっかけです。
ヘデグレン:私も「ハーフライフ」のMOD制作コミュニティで、「カウンターストライク」「Day of Defeat」「The Specialists」といったMODのマップを作ったのが出発点です。それから何年かして最初の就職先に採用してもらいました。
「オーバーウォッチ」の新しいマップの場所を決められるとしたら、どこを選びますか?
クリスティンとヘデグレン:それは「オーバーウォッチ 2」を見てのお楽しみです!
クラフケ:ポーランドのクラクフですね。何度か訪れてすごく気に入っている街です。中世の趣ある建物がしっかりと保存されているし、きれいな広場やオープンスペースがたくさんあります。面白い造形や配色で溢れてます!ブラジル育ちで今はカリフォルニア住まいの自分にとっては、異国情緒もたっぷりです。
プレイヤーがすぐには気付かなそうなディテールのなかで、お気に入りのものはありますか? チームや個人に対するオマージュ的なものを仕込んでいれば教えてください。
クリスティン:バーチャル旅行代理店の看板をよく見ると、メックのパイロットの髪の毛にアニメーションをつけています。それと、カネザカモールの5階に「フラミンゴ」という居心地のいいカクテルバーがあるんですが、ここは私の店でノンアルコールのドリンクを自由に楽しめます。もちろん、店のおごりですよ!
クラフケ:2年前に日本に行ったこともあり、市街地部分の作業はすごく楽しかったです。自分の旅行体験を「オーバーウォッチ」のマップ作りに活かせるなんて、そう滅多にありません。取材を兼ねて旅行先の写真をたくさん撮っていたんですが、実在の場所のような臨場感を出すのにとても役立ちました。また日本に行けるようになって、もっと探険できる日が来るのを心待ちにしています!
ヘデグレン:一番かわいらしいオマージュは、猫カフェの壁にかかっている猫のポートレートかもしれません。これみんな、開発チームのスタッフが飼ってる猫なんです。個人的には、車がビュンビュン走っている高架道路も気に入ってます。機動力のあるヒーローなら、他のプレイヤーを避けたり、回り込んだりする手段として利用できて爽快です。走っている車にはねられないよう気をつけないといけませんけどね!
コンセプト・アーティスト:ピーター・リー
プレイヤーが「KANEZAKA」に期待できることは?
クリスティン:ビルの谷間に隠れたファラに一度はやられると思います。
クラフケ:激しい死闘ですね!このマップでは、ファラ、アッシュ、マクリーが真価を発揮します。垂直方向のアクションが多くなり、探索できるような奥まった場所や隙間は少なめになっています。
ヘデグレン:「KANEZAKA」はコントラスト、つまりたくさんの対比が特徴のマップです。古くからの伝統的な街並みが残っているかと思えば、それとは正反対の現代的な光景が広がっているし、狭い路地がたくさんある一方で、開けた場所も多いレイアウトとなっています。マップ全体として見れば、日本らしさをうまく表現しつつ、これまでの「オーバーウォッチ」になかった、一味違う目新しさを盛り込めているのではないかと思います。
新マップの開発という大がかりなプロジェクトを、在宅でのリモート環境で進めるのはどうでしたか?
クリスティン:実はすごくうまくいきました!
クラフケ:ですね!専用のチャットルームを用意して、毎日マップのことを話し合ってました。進捗をスクリーンショットで共有したり、疑問な点を聞き合ったりとか。その意味では、実際にオフィスにいる時よりもスムーズに連携できたかもしれません。マップの開発に携わる全員がこのチャットルームにいましたから。今どうなっているのか、どんな状況か、何をしなければならないか、一人一人が把握していました。
ヘデグレン:このマップは最初から最後まで、リモートで在宅勤務をしている期間に制作されました。そういうことは初めてだったので、私は慣れるまで少し時間がかかりました。でも「オーバーウォッチ」チームの面々は、あっという間に在宅勤務に適応してましたよ。体は同じ場所にいなくても、みんな上手にアイデアを共有し合って、テストプレイをして、こまめにフィードバックを出し合っていました。おかげで素晴らしい時間を過ごすことができました。
「オーバーウォッチ」チームが撮った写真
マップ全体の雰囲気に貢献している細かな要素について聞かせてください。
クリスティン:照明に関しては、移動の際の目印になるよう、建物や通りの雰囲気に特徴を持たせる一方で、マップ全体の統一感を損なわないようにするのに苦労しました。
ヘデグレン:ユニークなお店や小道具、さまざまなテーマなど、いろいろなディテールがマップの随所に散りばめられていますが、リアリティを出すという点でも、印象が残りやすい場所を作り出すという点でも、非常に重要な要素です。
マップに置く建物はどうやって決めているんでしょうか?
クラフケ:一発で決まることはなく、改善に次ぐ改善です。「KANEZAKA」の場合は、モルテンが用意したデザインの概略を眺めたり、旅行先で撮った取材写真を見たり、Google マップを歩き回って、ここにはこういうものがフィットしそうだぞと考えたり、そういうことの繰り返しでした。ストーリーチームにリクエストされた建物もあります。たとえばバーがまさにそうですね。ですが、ゲームセンター「PACHIMARI」、猫カフェ、モール、「Pugtato」のショップといったそれ以外の建物に関しては、クリエイティブな裁量をもらっていました。
ヘデグレン:それぞれのエリアの方向性を決めたり、ディテールを詰めたりするプロセスは共同作業の色合いが強く、マップに関わる全員がアイデアを出し合うケースが多かったです。建物全体のテーマから、テーブルにどんな小道具を置くかといった細かい部分まで話し合いました。「KANEZAKA」の場合、現実世界の参考資料がたくさんあったおかげで、マップのさまざまな部分についてのアイデアには困りませんでした。
マップ全体やマップ内に登場する場所については、何からアイデアを得ましたか?
クリスティン:主に京都です。より具体的には、祇園や東山のあたりですね。
クラフケ:街の部分はだいたい東京です。特に池袋や下北沢を参考にしました。
ヘデグレン:マップに携わったスタッフの中には、実際に日本に行ったことがある人も何人かいたので、アイデアは最初から山ほどありました。清水寺の門前通りのような由緒ある地域もそのひとつです。居心地がよくて、こぢんまりした家屋が並んでいて、独特の雰囲気がありますよね。
コンセプト・アーティスト:ピーター・リー
デスマッチ・マップは、従来型のマップと比べてどういった制限、あるいは自由がありますか?
クラフケ:このマップは特に、従来のものよりずっとタイトです。従来型のマップには広々と動き回れるスペースがありますが、このマップではそうしたスペースはあまりありません。
ヘデグレン:従来型のゲーム・モードは、バランスや公平性の観点から、特定の建造物やレイアウトに従わざるを得ないことがどうしても多くなります。よりユニークなレイアウトを作れるという点で、自由度に関してはデスマッチ・マップに軍配が上がります。たとえばコントロール・マップは、両チームのバランスが均等でなければならない、よってシンメトリーであることが大切です。また、エスコート・マップにはペイロードが進んでいくメインの道が必要です。さらにどちらのモードも、リスポーンエリアから目標までの所要時間をほぼ同じにしないといけません。
デスマッチ・マップで一番重要な要素は、エキサイティングな戦闘ができるスペースを設けることです。全体的なレイアウトは基本的にどんな形でも構いません。もちろん、デスマッチ・マップも長距離、中距離、近距離のエリアを適度に織り交ぜ、バランスをとらないといけないのは当然です。すべてのヒーローが楽しめる場でないといけませんから。
新マップの舞台はどうやって選んでいますか?
クラフケ:ゲームディレクターやチームリーダーが決めることがほとんどですが、具体的なテーマに関して熱い思いがあれば、誰でもマップのアイデアを提案できます。かく言う自分もかなりアイデアを売り込みました!
ロジャー:世界中の場所から候補地を探して、普段からリストアップしています。だいたいは、チームの反応が一番いい場所が選ばれますね!ストーリーや「オーバーウォッチ」のキャラクターに関わりがある場所になることもあります。
「オーバーウォッチ」チームが撮った写真
破壊可能なオブジェクトを作るプロセスについて教えてください。
ロジャー:「このオブジェクトを壊せたら楽しいか?」という観点で考えます。「壊す以外に、そのオブジェクトで何ができるか」も考えますね。たとえば、ゲームセンターの筐体を壊すと景品が出てきます。消火器を壊せば圧力でプシューッと飛び回ります。環境とのインタラクトに関しては常にアイデアを探していますが、破壊可能なオブジェクトには特に力を入れています。
プレイヤーに楽しんでほしい、「KANEZAKA」の一押しポイントは?
クリスティン:これだけ小さなマップの中に、いろいろなお店やディテールが詰め込まれているので、カネザカという場所の多様性を味わってもらえると嬉しいです。精一杯日本の街の雰囲気を再現しました。誰もがまた実際に旅行できるようになる日まで、日本を訪れているような気分を皆さんに味わってもらえることを願っています!
クラフケ:本当に日本にいるかのような臨場感を味わってほしいですね!私たちが手がけたこのクールな空間に、皆さんの心をいざなうことができたら、環境アーティストとしての使命は果たされたも同然です。
ヘデグレン:個人的に、「HANAMURA」の都市部をメインにしたマップで「オーバーウォッチ」をプレイしてみたいという思いがあって、それが「KANEZAKA」のアイデアの元になりました。プレイヤーの皆さんにも楽しんでもらえたら嬉しいです。開発に関わったスタッフは、一人残らずこのマップをものすごく気に入っています。そのことがうまく伝われば、それに勝る喜びはありません。
最新チームデスマッチ・マップ「KANEZAKA」で戦いを制しましょう!1月26日までの期間中に、マッチに勝利してTwitchで「オーバーウォッチ」を視聴すれば、ハンゾー用スキン「競技者」などの新登場の報酬が手に入ります。